2020/03/19
昆正和のBCP研究室
■社会的背景や理由
(1)契約・法律の壁
会社によっては、業務に多数の外部スタッフ(請負契約にもとづいて集められた人員など)が関わっている場合がある。こうしたケースでは、自社が外部スタッフに直接出社や自宅待機を命じたり、勝手に代替要員として現場に投入したりすることはできない。
必要なスタッフを確保し、事業を早期に再開できるかどうかは、外部スタッフの管理元の企業がどこまで危機管理意識を持ち、対策を講じているかにかかっている。
(2)個人情報提示の拒否

個人情報保護の意識が高い今日では、緊急時の連絡網(住所・携帯電話の番号や家族の連絡先などで構成)の作成に協力したがらない社員も少なくない。緊急時の連絡先を明かさない社員、会社から個人の携帯電話やメールアドレスに指示・命令の通知が入ることを暗に拒む社員に対しては、個人情報の管理と用途について十分に説明し、理解や信頼を得ておくことが重要である。
(3)会社に対する忠誠心の低さ

これは人事・処遇にまつわる日常の根本的な問題(雇用条件・福利厚生・人間関係・報酬など)かもしれない。
今日では正規社員との賃金格差がありながら、高度なスキルや知識を必要とする重要なポストに就いている非正規社員が増えている。彼らは重要な業務の継続・復旧の担い手である半面、会社への帰属意識、協力意識は正社員ほど高くはない可能性がある。
対策としては、代替の効かない極めて重要な業務に従事する非正規社員を、正社員に格上げするなどの措置が必要である。
昆正和のBCP研究室の他の記事
- 第28回[最終回]:3つのステップによるメッセージの発信
- 第27回:必要な人員の確保をはばむ要因と対策その2
- 第26回:必要な人員の確保をはばむ要因と対策その1
- 第25回:災害時の帰宅または移動の留意点
- 第24回:安否確認のポイント
おすすめ記事
-
「自分の安全は自分で」企業に寄り添いサポート
海外赴任者・出張者のインシデントに一企業が単独で対応するのは簡単ではありません。昨今、世界中のネットワークを使って一連の対応を援助するアシスタンスサービスのニーズが急上昇しています。ヨーロッパ・アシスタンス・ジャパンの森紀俊社長に、最近のニーズ変化と今後の展開を聞きました。
2025/08/16
-
白山のBCPが企業成長を導く
2024年1月1日に発生した能登半島地震で震度7を観測した石川県志賀町にある株式会社白山の石川工場は、深刻な被害を受けながらも、3カ月で完全復旧を実現した。迅速な対応を支えたのは、人を中心に据える「ヒト・セントリック経営」と、現場に委ねられた判断力、そして、地元建設会社との信頼関係の積み重ねだった。同社は現在、埼玉に新たな工場を建設するなどBCPと経営効率化のさらなる一体化に取り組みはじめている。
2025/08/11
-
三協立山が挑む 競争力を固守するためのBCP
2024年元日に発生した能登半島地震で被災した三協立山株式会社。同社は富山県内に多数の生産拠点を集中させる一方、販売網は全国に広がっており、製品の供給遅れは取引先との信頼関係に影響しかねない構造にあった。震災の経験を通じて、同社では、復旧のスピードと、技術者の必要性を認識。現在、被災時の目標復旧時間の目安を1カ月と設定するとともに、取引先が被災しても、即座に必要な技術者を派遣できる体制づくりを進めている。
2025/08/11
-
アイシン軽金属が能登半島地震で得た教訓と、グループ全体への実装プロセス
2024年1月1日に発生した能登半島地震で、震度5強の揺れに見舞われた自動車用アルミ部品メーカー・アイシン軽金属(富山県射水市)。同社は、大手自動車部品メーカーである「アイシングループ」の一員として、これまでグループ全体で培ってきた震災経験と教訓を災害対策に生かし、防災・事業継続の両面で体制強化を進めてきた。能登半島地震の被災を経て、現在、同社はどのような新たな取り組みを展開しているのか――。
2025/08/11
-
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/08/05
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/08/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方