2013/01/29
誌面情報 vol35
東日本大震災から2年。巨大な津波が町を飲み込んでいく映像は、今なお忘れることはできない。

数百年、数千年に1度と言われるような自然災害は、知識では分かっていても、実際に体験した人がいないため、何が起こるのかを予測することは極めて難しい。これが災害対策の盲点でもある。
3.11以降、防災計画やBCP(事業継続計画)における被害想定の見直しが行われているが、噴火のリスクについて考えている企業や自治体は少ない。一方で、過去、世界で発生しているマグニチュード9以上の地震では、その直後から数年以内に必ず噴火が起きている。日本は世界の活火山の実に7%を占める火山大国である。しかも、ここ100年、大規模な噴火が発生しておらず、噴火のエネルギーがため込まれているとの推測もある。
噴火のリスクを闇雲に煽るつもりはない。富士山をはじめとする美しい風景は、火山が作り出したものでもあり、観光立国を目指す上では風評被害も考慮しなくてはいけないからだ。そして近く発生が懸念される首都直下地震や南海トラフの巨大地震への対策との優先順位も考慮しなくてはいけない。それでも、日本で暮らす以上、噴火を知る必要はある。今号では、噴火の仕組みと、影響、必要な対策についてまとめた。
◎企業の噴火対策
BCPの考え方、事例、保険戦略
ここまでは、主に噴火の仕組みや、社会全般における噴火対策の課題と目指すべき方向などを紹介してきたが、ここからは企業にとっての噴火対策を取り上げる。
降灰によって首都機能が麻痺する危険性については先に書いた通りだが、その際、企業に求められるのは、BCP(事業継続計画)だ。
帰宅困難や、数日間の交通機関の麻痺など、多くの対策は地震と共通している。ただし、注意しなくてはならないのは、自社が被災しなくても、飛行機が飛べなくなるなど、サプライチェーンが途絶する可能性があるということ。さらに保険について言えば、物損害が発生しなければ、基本的に地震保険は適用されない点に注意が必要だ。
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