1歳のゴールデンレトリーバーとラブラドルのミックスでメスのスターは、飼い主で救急救命士(パラメディック)のルイ・ベルオミニさんと一緒にProMedicaの救急車に乗って、働いています。

■「Local paramedic’s service dog keeps his PTSD at bay」(THE BLADE)
http://www.toledoblade.com/Medical/2016/11/03/Local-paramedic-s-service-dog-keeps-his-PTSD-at-bay.html

飼い主のルイさんは9年間、陸軍工兵としてイラクやアフガニスタンの銃撃戦を経験。帰国後も「いつも後ろから誰かが銃で狙っていて殺されそうな気がする」感覚が寝ているときも起きているときにも襲ってきて、日常生活をまともに送ることができず、PTSD(外傷後ストレス障害)と診断されました。

ある日、同じ軍隊に所属していた戦友がPTSDに苦しむ仲間のパーティーを開いた時、子犬だったスターの里親を探していることと、PTSDが発症しそうになったときに予防してくれるPTSD介助犬のトレーニングがあることを知り、スターを譲り受けてPTSD介助犬トレーニングを受けることを決意したのです。

■PTSD介助犬のトレーニングプログラム指導団体の一つ「Canines 4 Hope」
http://www.canines4hope.com/post-traumatic-stress-disorder-dogs-ptsd-dog-training-florida.htm

救急救命士のルイさんは、一般社会でPTSDと闘いながら生活している人たちを助けたり、事故などでPTSDに陥らないように予防するためにPTSD介助犬のスターと一緒に日々、多くの人命と心を救っています。



13ABC: Service dog rides in ambulance with ProMedica paramedic to help him cope with PTSD
(出典:YouTube)

1、PTSD介助犬の役割について

■PTSD介助犬は下記のような惨事体験を持つ人を介助してくれる
・戦闘など武力攻撃を行い相手を殺傷してしまった時に受けた心の負傷
・軍事攻撃や戦場体験を受けたことによる心身の負傷
・子供の性的または肉体的虐待
・テロ攻撃
・性的または肉体的暴行
・重大な事故、例えば自動車の破損
・火災、竜巻ハリケーン、洪水、地震などの自然災害
など

■具体的なPTSD予防犬の役割
・PTSD発症直前と発症後の治療前介助
・PTSDの発症中の治療介助
・感情過負荷に対処するための心理的介助
・暴行などに対するセキュリティ(警護)介助
など

Man’s best friend helps NC Guardsman with PTSD(出典:Wikipedia)

特別に訓練されたPTSD介助犬は、外傷後ストレス障害で苦しむ人々の生活に安全、安心、落ち着きの効果、および適度な健康的運動を提供することができます。

すべての介助犬や援助犬と同様に、精神的な介助を行うサービス犬は、自分のハンドラー(飼い主)の障害を事前に察知し、予防や緩和する作業を行います。また、発症後に激しく怒る、悲しむ、混乱するなど自らコントロールが難しい飼い主のサポートを行うため、飼い主の症状に応じて個別に訓練されています。

PTSD介助犬訓練には、PTSDキャリア(患者)に発症する、環境評価(パラノイアや幻覚のような場合)、シグナリングの行動(反復的または有害な行動の中断、薬剤の摂取、物体の検索、ストレスの多い状況にある飼い主の介助や誘導など)が含まれています。 

PTSD介助犬は、退役軍人やPTSDの被災者が快適な空間を提供する公共の場所で混乱したり、急に発症して立ち往生することを防ぎ、退役軍人を穏やかに保つことを助けることができるのです。

■ベテランのためのPTSD介助犬の役割
・セロトニン濃度を調整するのに役立つ
・血圧を下げるのに役立つ
・うつ病のエピソードを助ける
・心のよりどころになる
・ハンドラー(飼い主)を落ち着かせる
・公共の場所でPTSDを発症した飼い主に人々が詰め寄って混乱状態になる事態を予防する。
など

上記のそれぞれのタスクは、PTSD介助犬が何を実行できるかを表しており、各PTSD介助犬は、飼い主の病状に基づいて必要性の高いニーズをその所有者に応じて具体的に訓練されるため、全てタスクを身につけているわけではありません。

2、 PTSD介助犬の救急現場での活動について

一般的な救急事案による出動先で、犬好きな患者や家族の心理的緩和の役割をしたり、下記のような悲惨な現場では、救助活動中に要救助者の急性ストレス障害の予防や将来的なPTSDになる可能性のある要因排除的な役割を行います。

・幼児や子供が同乗する交通事故で両親が即死した場合等
・火災や地震などで被災し、惨事光景を強く体験してしまった人
・レイプやDV、暴力行為で救急車要請があった場合
・自損行為で救急車要請があった場合
など

なお、犬が苦手な患者に対しては、運転席と助手席の間にある患者や同乗家族から見えない場所にシートベルトをして大人しく待機しているそうです。

いかがでしたか?

日本国内でこれからも起こり続ける様々な災害で、被災者に限らず、災害現場活動に携わる人々、消防関係者にかかわらず、自衛隊、警察、市役所などの災害対策担当者、危機管理担当者、災害ボランティア関係者も自らが急性ストレス障害になることもあり、また、PTSDを発症してしまう可能性もあります。

「助かる命を助けた後は、助かる心を助ける」ようなPTSD介助犬の育成プログラムなどを含め、起こり続ける大災害に遭遇する将来を予測し、未来の被災者を助ける仕組みやカリキュラムを今のうちに次の災害に備えて具体的に増やしていくべきだと心から強く思います。

なぜならば、常備消防士や消防団員が公務災害としてPTSDを発症した場合、長期にわたり継続的な障害補償が続き、そしてさらに災害も起こり続けることが予想されるからです。

その障害補償は国民の税金を元に支払われ、今後さらなる高齢化と人口減少により、国はもとより地方自治体の財政状況も年々厳しさを増していきます。そしてすべての公共サービス、事業、施設を良好な状態で維持していくことはできなくなることがわかっています。

今は国難予防政策を総論でなく各論をわかりやすく伝え、具体的な対策プログラムやカリキュラムを提供できる有識者により、準備・実行されるべきだと強く感じています。

■「障害等級の決定について」の一部改正について(通知)
(出典:総務省消防庁)
https://www.fdma.go.jp/html/data/tuchi1605/160528syo121.html

以下、増え続ける傷痍軍人とPTSDの発症率や社会生活への影響、国の継続的賠償負担等については下記の文献が参考になるでしょう。

■感情障害の管理:急性心理サポートの枠組みとしての感情的試行
(出典:Eric de Soir)
http://www.erikdesoir.be/files/the_management_of_emotionally_disturbing_interventions.pdf

■2016年傷痍軍人プロジェクト調査(出典:Wounded Warrior Project)
https://www.woundedwarriorproject.org/media/2641/2016-wwp-annual-warrior-survey.pdf

■「軍隊の一昔古い最前線精神論は軍人とその家族に悪影響を及ぼしている?」
第3次調査結果 (出典:Antioch University)
https://www.antioch.edu/seattle/wp-content/uploads/sites/5/2017/02/3.-Is-the-Militarys-Century-Old-Frontline-Psychiatry-Policy-Harmful...Part-Three-of-a-Systematic-Review-by-Russell_-Figley.pdf

それでは、また。


■ペットの救急法「ペットセーバープログラム」
〜助かる命を助けるために〜
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(了)