■伝達方法とメッセージの内容

どのような点に注意すれば適切なメッセージプランが作成できるだろうか。ここでは、基本的な状況(自社が被災して業務が止まった後)を想定し、次の3段階でクライシスコミュニケーション(個別の営業対応だけでなくウェブ上での告知も含む)を行うものとしよう。

(1)初動対応段階での「緊急報告」メッセージ

初動段階で行う「緊急メッセージ」

発災当日から翌日以降、被害の概要を把握した時点で行う緊急メッセージである。災害が起きるということは、社内の業務処理が、あたかも時間が止まったようにさまざまな段階(未処理、中断、完成、出荷前など)で停止するということである。それらの影響をいち早く汲み取って告知するわけだが、性急すぎて的はずれな情報を発信しないよう注意したい。

(2)復旧に着手したときの「経過報告」メッセージ

復旧に着手したときは「経過報告」

仮復旧か通常復旧かを問わず、復旧活動に着手したことで、被災の混乱から抜け出しつつあることを伝える。代替手段を駆使して通常とは異なる体制で業務活動を再開した場合には、顧客からあなたの会社への連絡先や担当部署が一時的に変更されている可能性がある。問い合わせ時に混乱を招かないよう前もって変更情報を伝えておくことが肝要である。

(3)復旧完了の「業務再開」メッセージ
1日も早く注文品を受け取りたい、発注を再開したいと考えている顧客に向けて、復旧の完了が間近になった時点、または完了した時点で伝達するものである。この時点で、より具体的に、受け付けた注文品の生産再開や商品・サービスの納期予定などの情報を提供することも顧客の安心材料になる。

以上のメッセージは、各段階で1回ずつ(計3回)発信すればよいということではない。あくまで時間の経過と復旧の進捗度に沿った種類の異なるメッセージであることを示したものだ。実際、個々の案件についてはよりきめ細かにメッセージを伝え、何度も顧客とやり取りをすることになるだろう。

被災地の企業なのに、フリーズしたように災害前と同じ情報を掲載し続けているウェブページを見かけることがある。被災してホームページの更新ができないのであればやむを得ないが、放ったらかしになっているだけなら、風評被害を受ける可能性があることを覚えておこう。適切なタイミングで適切なメッセージを発信することが、クライシスコミュニケーションの最も重要なポイントである。