「くじ引き箱」でリアルで実践的なBCM演習

株式会社ディスコ

BCP、BCMの訓練・演習の必要性は強く叫ばれているが、自社でシナリオを作って演習するにはハードルが高く、コンサルティング会社にアウトソーシングするには費用がかかりすぎる。こうした悩みを解決する新たな演習方法を取り入れている企業がある。

半導体加工装置の製造メーカーのディスコ(東京都大田区)だ。「この演習を行うだけで実用的な手順書ができあがる」。コストも手間もかからない新たな手法とは?

いかに簡単に、抵抗なく継続できるか 
「切る・削る・磨く」技術に特化してグローバルに事業展開するディスコでは、2006年からBCMに取り組み、2008年には事業継続マネジメントシステム(BCMS)の英国規格BS259992を国内半導体業界では初めて認証取得。2012年には国際標準規格となったISO22301を国内でいち早く認証取得している。 

訓練・演習にはかなりの力を入れてきた。過去には何度も大型の図上演習も実施してきたが、準備に時間や手間がかかり、継続してやり続けるにはかなりのエネルギーが必要なことが課題になっていた。 

起きていないことを模擬体験することで、危機対応力を高めようというのが演習の醍醐味。担当者は、その醍醐味を演出しようと、シナリオをあえて事前に参加者に示さない。すると、受講者からは「想定が分からないから何ともしようがない」と文句が出てしまう。こんな光景は、訓練や演習に力を入れている企業ほど、よく見受けられることだろう。 

「BCMで一番大事なのは継続性です。コストをかけて作っても、続けられなければ何にもなりません」と言うのは同社BCM推進チームリーダーの渋谷真弘氏だ。 

「当社は生産現場を抱えているので、訓練のケースによっては製造を止めざるを得ません。すると、その分がコストにはね返ってしまう。さんざん試行錯誤を繰り返した結果、どれだけ簡単にできるか、どれだけ抵抗が少なく継続できるかが訓練・演習のポイントだということが分かりました」(渋谷氏)。 

「そこで、ひらめいたのがこれだったんです」と言いながら、推進チームの猪瀬順平氏が取り出したのは何の変哲もないティッシュの箱だった。 

レッサーパンダが印刷された箱で、チームでは「くじ引き箱」と呼んでいる。「とにかく、コストがかかっていないことは分かっていただけたと思います」と渋谷氏は冗談交じりに説明を始めた。