大成建設技術センターを訪ねて~大災害に備える先端技術の開発~
充実する設備で進む研究

高崎 哲郎
1948年、栃木県生まれ、NHK政治記者などを経て帝京大学教授(マスコミ論、時事英語)となる。この間、自然災害(水害・土石流・津波など)のノンフィクションや人物評伝等を刊行、著作数は30冊にのぼる。うち3冊が英訳された。東工大、東北大などの非常勤講師を務め、明治期以降の優れた土木技師の人生哲学を講義し、各地で講演を行う。現在は著述に専念。
2017/08/28
安心、それが最大の敵だ
高崎 哲郎
1948年、栃木県生まれ、NHK政治記者などを経て帝京大学教授(マスコミ論、時事英語)となる。この間、自然災害(水害・土石流・津波など)のノンフィクションや人物評伝等を刊行、著作数は30冊にのぼる。うち3冊が英訳された。東工大、東北大などの非常勤講師を務め、明治期以降の優れた土木技師の人生哲学を講義し、各地で講演を行う。現在は著述に専念。
「地図に残る仕事」。大成建設が掲げる「理念」である。大成建設技術センターを初めて訪ねた。同センターは横浜市郊外の戸塚区にある。防災、環境技術、社会基盤(インフラ)などの分野で日本発の最先端イノベーション(技術革新)を追究する研究拠点となっている。研究者数は約200人。
同センターが横浜市に移転した1979年以降、道路や橋、高層ビルのほか、水理実験、長寿命のコンクリート、ロボットなどの高度な技術開発に取り組んできた。2011年の東日本大震災発生以降は、防災や減災対策、災害の事前予知の研究開発を重視し、節電などを充実させた。2012年から5カ年計画をスタートさせ、津波実験施設(業界最大級)や多目的クリーンルームを設け、建設ICT実験棟を増設(業界初)。ZEB(ゼロエネルギービル)実証棟(業界初)を新設した。
2016年には音響風洞実験棟(業界初)を増設するなど、時代とともに変わる社会の要請に応えて来ている。情報通信技術を駆使した実験棟も建設し、災害復旧などに使われる遠隔操作ロボットの実証試験を続けている。主な研究内容は免震技術、地震動解析、風洞実験、高強度コンクリート材料の研究、除染技術など…。
研究成果のうちよく知られた国際的事業を一つ上げたい。2013年10月、トルコ最大の都市イスタンブールでアジアと欧州を隔てるボスポラス海峡を海底トンネルでつなぐ150年来の夢が実現した。海外での快挙である。東西を結ぶ海峡横断鉄道トンネルの技術を支えたのが同技術センターの高度なトンネル掘削技術だ。陸地と海底トンネルの間を人工地盤で埋め立て、シールドマシン(掘削機)を誤差数センチの高精度で動かした。凍結工法と呼ぶ特殊な止水技術で、海水の浸入を防いだ。難工事を完遂させたのは長年培われた技術の蓄積があったのである。(以下、同技術センターの公表資料・研究論文、日本経済新聞関連記事などを参考にし、一部引用する。写真・図面は同技術センター提供)。
安心、それが最大の敵だの他の記事
おすすめ記事
白山のBCPが企業成長を導く
2024年1月1日に発生した能登半島地震で震度7を観測した石川県志賀町にある株式会社白山の石川工場は、深刻な被害を受けながらも、3カ月で完全復旧を実現した。迅速な対応を支えたのは、人を中心に据える「ヒト・セントリック経営」と、現場に委ねられた判断力、そして、地元建設会社との信頼関係の積み重ねだった。同社は現在、埼玉に新たな工場を建設するなどBCPと経営効率化のさらなる一体化に取り組みはじめている。
2025/08/11
三協立山が挑む 競争力を固守するためのBCP
2024年元日に発生した能登半島地震で被災した三協立山株式会社。同社は富山県内に多数の生産拠点を集中させる一方、販売網は全国に広がっており、製品の供給遅れは取引先との信頼関係に影響しかねない構造にあった。震災の経験を通じて、同社では、復旧のスピードと、技術者の必要性を認識。現在、被災時の目標復旧時間の目安を1カ月と設定するとともに、取引先が被災しても、即座に必要な技術者を派遣できる体制づくりを進めている。
2025/08/11
アイシン軽金属が能登半島地震で得た教訓と、グループ全体への実装プロセス
2024年1月1日に発生した能登半島地震で、震度5強の揺れに見舞われた自動車用アルミ部品メーカー・アイシン軽金属(富山県射水市)。同社は、大手自動車部品メーカーである「アイシングループ」の一員として、これまでグループ全体で培ってきた震災経験と教訓を災害対策に生かし、防災・事業継続の両面で体制強化を進めてきた。能登半島地震の被災を経て、現在、同社はどのような新たな取り組みを展開しているのか――。
2025/08/11
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/08/05
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/08/05
カムチャツカ半島と千島海溝地震との関連は?
7月30日にカムチャツカ半島沖で発生した巨大地震は、千島からカムチャツカ半島に伸びる千島海溝の北端域を破壊し、ロシアで最大4 メートル級の津波を生じさせた。同海域では7月20日にもマグニチュード7.4の地震が起きており、短期的に活動が活発化していたと考えられる。東大地震研究所の加藤尚之教授によれば、今回の震源域の歪みはほぼ解放されたため「同じ場所でさらに大きな地震が起きる可能性は低い」が「隣接した地域(未破壊域)では巨大地震の可能性が残る」とする。
2025/08/01
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方