住民主体のワークショップ展開 


横浜市と同社は、まず次世代郊外まちづくりを推進するのにあたり、たまプラーザ駅北側に位置する横浜市青葉区の美しが丘1~3丁目を先行モデルに設定した。 

街の再生で協働することになった横浜市と同社は、当該モデル地区で2012年10月から、住民主体のまちづくりを進めるとして、ワークショップと座学講座「たまプラ大学」およ、び専門部会を複数回にわたって開催。ワークショップでの住民意見と専門部会での専門家のアドバイスを反映させて、新たなまちづくりビジョン「次世代郊外まちづくり基本構想2013」を2013年6月にとりまとめた。 

ワークショップは全5回開催。美しが丘の街歩きの後、街の「良いところ」「気がかりなところ」「あったらいいな」「こんなことができると良い」の意見を上げてもうらことを手始めに、理想のまちづくりの在り方をグループごとに討議、大学でもまちづくりの予備知識を得るなどしながら議論を深めた。ワークショップには毎回100人ほどが参加した。 

次世代郊外まちづくりビジョン 
ワークショプ等での議論を踏まえて、横浜市と東急電鉄は、まちの将来像の基本コンセプトを「WISE CITY(ワイズシティ)」と定めた。    

WISEとは、「Wellness」(多世代が充実したライフスタイルを実現し、生き生きと健康的に暮らせるまち)、「Intelligence&ICT」(生活サービスや住民の参画・活躍を、最先端情報技術で支えるまち)、「Smart&Sustainable」(生活サービスの総合的な連携と持続可能性を図り、世代が循環していくまち)、「Ecology・Energy&Economy」(環境負荷の大幅な低減を図り、環境とエネルギー、情報の観点から再構築されたまち)―の頭文字をとったもの。 

まちづくりビジョンの取り組みに際し、次の5つのスタンス(姿勢)を決めた。①多世代がお互いに助け合うまち、②多様性の実現、③地域住民・行政・民間事業者による新しい連携と役割分担の姿、④分野横断の一体的解決と規制の見直し、⑤コミュニティ・リビング・モデル。 

このうち②の多様性は、都心で働くサラリーマンのファミリー層の持家という均質な住宅地から、多様な職業や文化、生活シーンをまちに取り込むことを志向したもの。 

③の地域住民と行政、民間事業者の連携と役割分担では、複雑多岐にわたる郊外住宅地の課題を行政だけに任せていたのでは限界があるため、地域住民の参画と、民間事業者の活力やビジネスを導入したまちづくりによって解決していく考え。 

④の分野横断の一体的解決では、老朽化団地や企業社宅の建て替え、再開発、都市計画や道路、公園、学校などの施設整備といった従来型のハード的なまちづくりではなく、医療、介護、保育や子育て支援、コミュニティ形成、教育、環境、エネルギー、交通・移動、防災、生きがい、就労、エリアマネジメントなど、まちづくりの仕組みなどを、まちや暮らしに必要なソフト面も対象にする。 

⑤のコミュニティ・リビング・モデルとは、これまで駅周辺を除いて住まう機能しかなかった住宅地を、歩いて暮らせるエリアにクラスター分けし、そこに、交流、医療、介護、保育、子育て支援、教育、環境、エネルギー、交通、防災、就労といった、暮らしのインフラ機能を導入して街の活力を生み出そうというもの(図1)。それを具体的に絵にしたものがパース1(図2)。コミュニティリビングは、医療、介護施設、保育園、商店、カフェ、レストラン、交流施設などにより賑わいを創出する。