最大規模想定のハザードマップがない地域も

最大規模降雨の洪水浸水想定区域を指定していない地域もあります。最大規模想定のハザードマップが、そもそもありません(国や都道府県で指定された後、市町村がハザードマップを策定します)。以下に都道府県管理の河川で指定されていない地域のグラフがありますが、皆さまの地域はいかがでしょうか?

だから、千寿園だけの問題ではないのです。

では、どうすれば今後、避難確保計画が作られるのでしょうか。これについては、国土交通省、厚生労働省および都道府県・政令市が連携して説明会を開いています。

写真を拡大 水害・土砂災害への備え〜早期の避難による安全の確保をめざして〜 国土交通省 関東地方整備局(https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000689954.pdf

この説明会では、最大規模想定の水害リスクとハザードマップの読み方の説明もあります。

写真を拡大 水害・土砂災害への備え〜早期の避難による安全の確保をめざして〜国土交通省 関東地方整備局(https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000689954.pdf

さらに、「家屋倒壊等氾濫想定区域」の説明もあります。「家屋倒壊等氾濫想定区域」について、国土交通省ではこのように説明されています。

平成27年9月関東・東北豪雨においては、堤防決壊に伴う氾濫流により家屋が倒壊・流出したことや多数の孤立者が発生したことを踏まえ、住民等に対し、家屋の倒壊・流失をもたらすような堤防決壊に伴う激しい氾濫流や河岸侵食が発生することが想定される区域(家屋倒壊等氾濫想定区域)を公表することとしています。
https://www.mlit.go.jp/river/bousai/main/saigai/tisiki/syozaiti/

要するに、家が壊れたり流されたりするレベルの氾濫流になりますよ、という場所です。(行政用語って難しいし分かりにくい……)

この区域では、建物の倒壊の恐れがあるため、2階以上に垂直避難ではなく、安全な場所への立ち退き避難が必要になります。

写真を拡大 水害・土砂災害への備え〜早期の避難による安全の確保をめざして〜国土交通省 関東地方整備局(https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000689954.pdf

実際に千寿園のあった球磨村渡では、秒速3メートルの氾濫流が地域を襲い、「津波のようだった」という報道もあります。そして、報道の中で、2017年に球磨川流域では、「家屋倒壊等氾濫想定区域」が指定されていたものの、市町村のハザードマップにはまだ記載されていなかったことが指摘されています。

熊本 球磨川の氾濫流 秒速3メートル以上 早期に高台に避難を 
2020年8月3日 22時38分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200803/k10012549151000.html

なぜハザードマップに記載されていなかったかについて、上記記事では以下のように記載されています。

球磨村の中渡徹防災管理官は「球磨村のような小さな自治体では、毎年、ハザードマップの更新に予算を要求できるほど財政も潤沢ではないし、マンパワー不足が顕著で反映には至らなかった。ただ、今後は今回の被害の教訓を踏まえ、作り直したい」と話していました。

一方、国土交通省八代河川国道事務所の山口広喜調査課長は「氾濫流の情報が反映できていなかったのは、私たちの情報提供や支援が十分ではなかったことも一因で反省する必要がある。次の災害に備え、氾濫流の想定区域を周知することで、少しでも地域住民の避難行動につなげて被害の軽減を図りたい」と話していました。

ハザードマップに「家屋倒壊等氾濫想定区域」が記載されていたら、千寿園でもより早めの避難行動もあったかもしれません。ただ、小さな自治体で予算もないところでハザードマップへの反映が遅れることも今後の課題として考えさせられる問題です。