2020/08/12
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』
最大規模想定のハザードマップがない地域も
最大規模降雨の洪水浸水想定区域を指定していない地域もあります。最大規模想定のハザードマップが、そもそもありません(国や都道府県で指定された後、市町村がハザードマップを策定します)。以下に都道府県管理の河川で指定されていない地域のグラフがありますが、皆さまの地域はいかがでしょうか?
だから、千寿園だけの問題ではないのです。
では、どうすれば今後、避難確保計画が作られるのでしょうか。これについては、国土交通省、厚生労働省および都道府県・政令市が連携して説明会を開いています。

この説明会では、最大規模想定の水害リスクとハザードマップの読み方の説明もあります。

さらに、「家屋倒壊等氾濫想定区域」の説明もあります。「家屋倒壊等氾濫想定区域」について、国土交通省ではこのように説明されています。
https://www.mlit.go.jp/river/bousai/main/saigai/tisiki/syozaiti/
要するに、家が壊れたり流されたりするレベルの氾濫流になりますよ、という場所です。(行政用語って難しいし分かりにくい……)
この区域では、建物の倒壊の恐れがあるため、2階以上に垂直避難ではなく、安全な場所への立ち退き避難が必要になります。

実際に千寿園のあった球磨村渡では、秒速3メートルの氾濫流が地域を襲い、「津波のようだった」という報道もあります。そして、報道の中で、2017年に球磨川流域では、「家屋倒壊等氾濫想定区域」が指定されていたものの、市町村のハザードマップにはまだ記載されていなかったことが指摘されています。
2020年8月3日 22時38分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200803/k10012549151000.html
なぜハザードマップに記載されていなかったかについて、上記記事では以下のように記載されています。
一方、国土交通省八代河川国道事務所の山口広喜調査課長は「氾濫流の情報が反映できていなかったのは、私たちの情報提供や支援が十分ではなかったことも一因で反省する必要がある。次の災害に備え、氾濫流の想定区域を周知することで、少しでも地域住民の避難行動につなげて被害の軽減を図りたい」と話していました。
ハザードマップに「家屋倒壊等氾濫想定区域」が記載されていたら、千寿園でもより早めの避難行動もあったかもしれません。ただ、小さな自治体で予算もないところでハザードマップへの反映が遅れることも今後の課題として考えさせられる問題です。
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