2020/08/28
福祉と防災
熊本地震後の関連死の状況
熊本地震では関連死が222人にのぼり、直接死50人の4.4倍以上になってしまいました。熊本県は、熊本地震による災害関連死の状況について、次の貴重な調査を行っています。
これを見ると、死亡時の年代は、高齢になるほど増えていきます。90代になると下がりますが、元々の人口が少ないためです。また、発災後1週間、1カ月以内という早い時期に亡くなる方が多い。発災当初の避難生活が高齢者にいかに過酷なことか、考えさせられます。
コロナ禍の避難では、少人数・分散避難が重要とされます。災害関連死を防止する観点からも、これは望ましいことです。ある程度、環境の整ったところで落ち着いて暮らせる生活避難が、特に高齢者にとってのこれからの避難の在り方になります。
子どもや知り合いが住んでいる住宅への縁故避難、ホテル・旅館への避難、日常から通っている福祉施設への福祉避難などが候補になります。小中学校の体育館で、床で雑魚寝する避難生活は、もはやあり得ません。
亡くなられた場所で最も多いのは自宅で約4割、そのほかに自宅から病院等に搬送されて亡くなったケースが24%あり、この両者で6割を超えています。
「自宅にいるから安心」ではなく「自宅だから危険」と考えを改めなくてはなりません。このデータを見て以来、私たちボランティアも、早く在宅の被災者を訪問して支援をするとともに、具合の悪い方を発見することが大事というのが常識となっています。
避難生活による心身の衰弱
どんなに年齢を重ねても、健康で、生きがいをもって前向きに生きていたいものです。ところが、災害後は、残念ながら心身ともに衰弱する傾向があります。
まず災害後の要介護者認定数は、東日本大震災(岩手・宮城・福島)後に前年同期比24%増(石巻除く)となっています。特に避難者が多かった福島県は38%増、全町避難となった富岡町は約4倍に激増しました。増加理由は「仮設住宅など避難先の生活の影響による心身の衰え」が最多でした(出典:2012年3月4日朝日新聞デジタル)。熊本地震後にも同様の傾向があり、最も被害の大きかった益城町は前年比20%増、西原村は18%増となっています。
そして、心の健康では、東日本大震災後、次のようにうつ症状を持つ人が顕著に増えています。
福祉と防災の他の記事
おすすめ記事
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方