リスクは数多く存在する(写真:写真AC)

■日系企業のリスク管理は「受け身的」

今回は、中国において経営を行う上で考えておくべきリスク対策について、総括的な話をしたいと思います。

これまで、中国に進出している多くの日系企業のリスク対策をお手伝いしてきました。当社の場合は環境対策サポートがメインであるため、昨今、中国政府の性急な環境政策の変化も絡み、その対策に右往左往する現場の現実を多く見てきました。

そこで感じたことをお話しようと思いますが、筆者が強調したいポイントがあります。それは「日系企業のリスク対策マネジメントは静的であり、受け身的である」という事実です。

ビジネスリスクとは、事業を運営する上で起こり得るリスクの総称であり、事業を運営する以上リスクは必ず存在します。事業拡大、海外展開、経営戦略を遂行するには、一定のリスクを背負わざるを得ません。リスクをゼロにすることは不可能であり、いかにそれを管理するのかが経営側の仕事といえるでしょう。

ところが、ビジネスリスクを管理するといっても、不確実性や危険性は数限りなく存在し、企業の存続を脅かすようなリスクには多種多様なものが存在します。またリスク自体は発生しないかもしれないという性格だからこそ「リスク」として扱われているのであって、最初から確実に起きることが明確な事象はリスクとしてではなく、将来の計画に予定として考えておくべきこととなります。

さて、一般的にBCM(事業計画マネジメント)では、リスクを以下の4つに分けて分類することが多いようですので、これらのポイントに即しながら考えてみたいと思います。

1. 経営戦略リスク
2. 事業運営リスク
3. 事故・災害リスク(事業継続リスク)
4. 法務リスク

■経営戦略リスク

米中摩擦をどうとらえるかで変わる判断(写真:写真AC)

残念なことではありますが、米中間の軋轢はその度合いをますます大きくしております。

中国に進出している企業、またはこれから考えていた企業におかれては、この米中対立をどう捉えるかによって、今後の身の振り方や、中国ビジネスの経営上にどんなリスクが潜んでいるかの判断が変わってくることになるでしょう。

特に現下の日本のマスメディアや世論が「反中国」に傾いていく中で、将来に向かっての経営判断は難しさを増していることは間違いありません。

しかし、すでに「製造拠点としての中国」の時代は終わり、より「市場としての中国」の存在価値が高まる中、あえてそのリスクを取っても「メリット」の大きさを重視していくのか、リスクを取ることが企業経営として危険と判断し足踏みするのかは、業種や業態、ビジネス規模、そしてこれまでの中国における実績や立ち位置によって変わってくることは自明です。

いわゆる米国をリーダーとする西側陣営に位置する日本ですから、政治を無視した判断はできようもありません。よって、このリスクをとることは正しく「賭け」といえるでしょう。