「ニューノーマル(新たな常態)」に潜む新たなリスク
第1回:コロナで加速する経営環境の変化
本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、信州大学特任教授として教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
2020/10/07
感染症時代のリスクマネジメント
本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、信州大学特任教授として教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
企業のリスクマネジメントは、与えられた経営環境のもとで、リスクを組織として管理し、損失などの回避や低減を図るプロセスです。新型コロナウイルス感染症の流行は長期化が想定されているとともに、企業の経営環境に大きな変化をもたらしていることから、企業のリスクマネジメントもその変化を踏まえて進めていくことが重要です。
実際、多くの企業では、在宅勤務に代表されるテレワークの導入、出張や会食・接待などに関する新しいルールの策定など、業務遂行についてさまざまな見直しが行われてきました。本連載では、それらの新しい制度やルールをリスクマネジメントの観点から考えます。
WHO(世界保健機関)は2020年8月1日、新型コロナウイルス感染症への対応を検討する専門家委員会の討議内容を発表しましたが、その中で、この流行が長期化すると予測しています。
また国が6月24日に発表した資料「コロナ危機を踏まえた今後のイノベーション政策の在り方について」(経済産業省、産業技術環境局)でも、流行の長期化に警鐘が鳴らされています。
このレポートでは、流行長期化の理由として、季節性インフルエンザに比べて潜伏期間が比較的長いこと(多くは5~6日)、そして症状のない人からも感染することをあげています。
また、外出自粛などさまざまな感染拡大の抑制措置を講じても、過去に大流行した新型インフルエンザのパンデミックに照らせば、今回の大流行も18~24カ月続くことが考えられるとしています。
さらに懸念されることは、新型コロナウイルス感染症の流行が終息した場合でも、感染症のリスクが去らないことです。今後、未知のウイルスの流行に見舞われた場合は、新たなパンデミック(世界的な大流行)が起こる可能性も十分考えられます。パンデミックリスクを増大させる背景には、次の要因があります。
発展途上国を中心として人口が増加する中、特に都市における人口増加が、人と人の社会的距離を縮めること、また人口急増にさまざまなインフラが追いつかず、衛生状態が悪化することなどが感染拡大の要因となります。
潜伏期間中の人が、航空機を利用して国と国の間を移動することによって、感染を広げることが考えられます。また動物、昆虫、そして食料が移動することによる感染拡大もあり得ます。
人口の増加に伴い、新たな土地が必要となります。それまで無人であった森林領域などに立ち入る必要性が生じ、その結果として新たな動物群と接触し、未知のウイルスに感染する可能性が出てきます。
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