2014/07/25
誌面情報 vol44
四国版「くしの歯作戦」に向け産官学連携
高知県や徳島県の沿岸部を中心に、南海トラフ地震により甚大な被害が予想される四国では、県、国、ライフライン企業、大学など産官学の関係機関が一体となり、被災後に地域全体を早期に復旧させるための計画「四国地震防災基本戦略」を策定している。これを受け香川大学は、BCPの考え方を地域全体にあてはめ、地域にとって重要な機能を優先的に継続・復旧させる地域継続計画(DCP:District Continuity Plan)を提唱し、現在、具体化に向け事業者間の調整を進めている。ポイントは各組織のBCPを、地域継続の上位概念のもといかに最適化させるかだ。
四国は、南海トラフ地震などによる広範囲に巨大津波により、高知県土佐清水市、黒潮町、四万十町で最大津波高が30mを超えるなど、深刻な被害が想定されている。津波による死者想定数は約6.8万人、負傷者数が約0.5万人、要救助者数が約1.3万人、これに加え、震度6強以上の強い揺れにより、建物倒壊による死者約2.5万人、負傷者約14.6万人、要救助者約8万人が発生すると考えられている。四国4県の総人口約390万人に対して、死者、負傷者、要救助者が33.7万人と、1割近くに上る計算だ。
香川大学は、こうした課題に対し、2012年から企業、行政、ライフライン事業者らとともに香川地域継続検討協議会(会長:香川大学危機管理研究センター長白木渡氏)を立ち上げ、地域継続計画(DCP)のあり方を検討してきた。同協議会が定義するDCPは、地域を継続させるために、どのような機能をいつまでに復旧させるのかを明確にし、支障となるボトルネックなどを洗い出し、実行可能な計画としてまとめるというもの。
具体的な流れは以下の通りだ。
1.想定する災害を洗い出す
2.地域がどのような影響を受けるかを分析する(地域インパクト分析)
3.地域にとって主要な機能(活動)とそれを実行する上で支障となるボトルネックを把握する
4.地域の何の機能を、どの地域を優先復旧させるのか重要業務を選定する
5.目標復旧時間を設定する
6.実現に向けた具体的な戦略を立てる
四国版DCPのイメージは、「四国地震防災基本戦略」に基づき、比較的被害が少ないことが想定され、国の緊急災害現地対策本部が置かれる香川県高松市を拠点に、そこから被害が大きい高知、徳島の沿岸部などに救助救援活動を展開させる。
誌面情報 vol44の他の記事
- BCP+地域貢献の新たな道 地元住民1500人を受入れ
- 特集1 BCPと地域貢献
- BCPの全体最適化 香川地域継続検討協議会
- 堤外地をBCP連携で守る 愛知県三河港明海地区
- 60万人の帰宅困難者対策 東京駅周辺防災隣組
おすすめ記事
-
永野芽郁と田中圭の報道から考える広告リスクタレントの不倫疑惑
「不倫報道で契約解除」は企業の広告・広報担当者にとって決して珍しい判断ではなくなりました。特に「B to C」企業は世間の空気に過敏にならざるを得ない構造があります。永野芽郁さんと田中圭さんという人気俳優による不倫報道が世間をにぎわせています。企業にとって本質的に問われるべきは、タレントの私生活そのものではなく「報道によって自社ブランドが受けるリスクをどう評価し、どう備えていたか」という事前準備と、報道後のブレない対応です。本稿では、広告タレント起用のリスクに対して、企業が準備しておくべきこと、そして“報道された時”にどう判断すべきかを整理します。
2025/05/20
-
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/05/13
-
「まさかうちが狙われるとは」経営者の本音に向き合う
「困った人を助け、困った人を生み出さず、世界中のデータトラブルを解決します」。そんな理念のもと、あらゆるデータトラブルに対応するソリューションカンパニー。産業界のデータセキュリティーの現状をどう見ているのか、どうレベルを高めようとしているのかを聞きました。
2025/05/13
-
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/05/05
-
企業理念やビジョンと一致させ、意欲を高める人を成長させる教育「70:20:10の法則」
新入社員研修をはじめ、企業内で実施されている教育や研修は全社員向けや担当者向けなど多岐にわたる。企業内の人材育成の支援や階層別研修などを行う三菱UFJリサーチ&コンサルティングの有馬祥子氏が指摘するのは企業理念やビジョンと一致させる重要性だ。マネジメント能力の獲得や具体的なスキル習得、新たな社会ニーズ変化への適応がメインの社内教育で、その必要性はなかなかイメージできない。なぜ、教育や研修において企業理念やビジョンが重要なのか、有馬氏に聞いた。
2025/05/02
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方