霧中の多重衝突事故―12月の気象災害―
あなどれない濃霧の脅威
永澤 義嗣
1952年札幌市生まれ。1975年気象大学校卒業。網走地方気象台を皮切りに、札幌管区気象台、気象庁予報部、気象研究所などで勤務。気象庁予報第一班長、札幌管区気象台予報課長、気象庁防災気象官、気象庁主任予報官、旭川地方気象台長、高松地方気象台長などを歴任。2012年気象庁を定年退職。気象予報士(登録番号第296号)。著書に「気象予報と防災―予報官の道」(中公新書2018年)など多数。
2020/11/28
気象予報の観点から見た防災のポイント
永澤 義嗣
1952年札幌市生まれ。1975年気象大学校卒業。網走地方気象台を皮切りに、札幌管区気象台、気象庁予報部、気象研究所などで勤務。気象庁予報第一班長、札幌管区気象台予報課長、気象庁防災気象官、気象庁主任予報官、旭川地方気象台長、高松地方気象台長などを歴任。2012年気象庁を定年退職。気象予報士(登録番号第296号)。著書に「気象予報と防災―予報官の道」(中公新書2018年)など多数。
自動車を運転していて怖いのは、視界がきかなくなる時だ。対向車の跳ね上げた路面の水が不意にフロントガラスに降ってきて視野をふさがれ、一瞬パニックになりそうになった経験がある。
視界を妨げる気象現象の一つに霧がある。霧は前方を見えなくするだけでなく、自分がどこにいるかさえ見失わせるので、交通にとっては厄介な存在だ。
1998年12月1日の明け方、福島県会津若松市近くの磐越自動車道で、車両16台が巻き込まれる多重衝突事故が発生し、2人が死亡、30人が重軽傷を負った。当時、事故現場付近は霧に包まれており、これが事故を誘発したとみられている。今回は、交通障害を引き起こす霧、なかでも内陸の盆地に発生する霧を取り上げる。
霧と聞いて何を連想するだろうか。幻想的でロマンチックな風景だろうか。陰うつで暗いイメージだろうか。
霧は大気中に浮遊する微水滴によって視程(見通せる距離)が低下する現象である。気象観測では、視程が1キロメートル未満の場合を霧、1キロメートル以上の場合をもやという。霧の中では湿度が100%に近いが、もやの場合の湿度は80~90%程度である。また、視程の低下をもたらす原因が水滴ではなく乾いた微粒子の場合は煙霧という。
空気中に含まれ得る水蒸気量には限度があり、いっぱいまで水蒸気の含まれた状態が湿度100%である。これを「飽和」という。図1の曲線は気温と飽和水蒸気量の関係を模式的に描いたもので、飽和水蒸気量は気温が高いほど大きい。曲線の右下方は未飽和の領域であり、左上方は過飽和の領域だ。
霧が発生するのは、地表近くの空気が水蒸気に関して飽和した状態となる時である。それが実現するためには、水蒸気量が増加するか、もしくは気温が下がる必要がある。
例えば、ある場所の気温と水蒸気量が図1のA点で示されるとしよう。そこの空気が、気温を保ったまま水蒸気の補給を受けるとする。すると、A点は図上で上方にシフトしていき、飽和水蒸気量曲線にぶつかって飽和する。これが、霧発生の第1のメカニズムである。
また、図1のA点で示される空気が、水蒸気量を保ったまま気温が下がるとする。すると、A点は図上で左方向にシフトしていき、飽和水蒸気量曲線にぶつかって飽和する。これが、霧発生の第2のメカニズムである。ちなみに、この場合に飽和した温度を「露点温度(または露点)」という。
霧の発生においては、この二つのメカニズムのいずれか一方、もしくは両方が関与する。
気象予報の観点から見た防災のポイントの他の記事
おすすめ記事
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/06/23
W杯に水を差したDAZN契約プラン表示が原因で大炎上
世界最大のスポーツイベントであるサッカーのW杯が6月12日に開幕。日本は1勝1分けで決勝トーナメント進出を大きく引き寄せている。その裏でW杯の視聴契約を巡ってSNSで大炎上していたのが、スポーツコンテンツの配信会社であるDAZNだ。W杯の全試合を視聴できる年間契約プラン表記に問題があり、13日にお詫びを発表した。しかしその対応も反感を買い、炎上は継続。最終的には年間プラン自体を取り下げた。DAZNの何が問題だったのか、消費者問題に詳しい住田 浩史弁護士に聞いた。
2026/06/23
企業の副業解禁とコンプライアンス対策を支援
企業の副業解禁の流れが加速している。従業員は本業以外の労働を増やすことで、収入増が見込める。従業員が副業で獲得したスキルで、本業への貢献も期待できる。企業側にとっても、副業は採用活動に活用できる。業務発注から関係を深めてからの転職や採用後のミスマッチを防止する効果がある。一方で、副業の一般化に伴い、同業他社での競業や情報漏えい、ブランド毀損、過重労働など、副業リスクは増加している。フクスケ(東京都千代田区)は、企業の副業制度の運用支援に加え、副業コンプライアンス向上に関するデータを分析し、リスク診断サービスも提供している。代表取締役社長の小林大介さんに、企業の副業解禁がもたらす影響について話を聞いた。
2026/06/12
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方