2018/01/22
安心、それが最大の敵だ
DIGSUSS運用モデルの検討
DIGSUSSの運用モデル検討に先立ち、意思決定に必要となる情報種の分類を試みる。
避難勧告等の意思決定に必要となる情報種を分類した事例を見てみると、医療分野では以下のように情報の分類がなされていることが分かった。
1.客観的な情報:血圧や脈拍など
2.主観的な情報:患者自身の言語的表現
また、医療分野においては、「主観的な情報」は、医師が意思決定を行う際に不可欠な非常に重要な情報として取り扱われている。
災害に関する情報として「どこで」「どのような状況になっているか」をツイートから把握する場合、得られる情報の内容に応じて、情報の客観性や主観性が異なることが考えられる。そこで、以下のようにツイートから得られる情報の分類を試みた。

1.客観的な情報
ツイート場所と状況が具体的に分かる情報として、位置情報と写真の両方が添付されたツイートを「客観的情報」に分類した。
また、具体的なツイート場所や状況は分からなくても、それらが推定できるものを「準客観的情報」に分類した。これは、場所推定されたツイートや状況を描写したものが該当する。場所推定ができない場合でも、利用者が読めば関係する地域の者の投稿であることが大凡推測できる場合は、場所が推定できるものとして、「準客観的情報」とした。
2.主観的な情報
一方、國友氏らが避難勧告等の判断に活用できる可能性があるとした「住民の心情・心理等」を表すツイートは、場の状況を表す主観的な情報であると位置づけた。このうち、位置情報付きのものを「主観的情報」、場所推定したもの(場所推定はできない場合でも、利用者が読めば関係する地域の者の投稿であることが大凡推測できるものを含む)を「準主観的情報」と分類した。
このシステムの運用主体は、避難勧告等を発令する立場にある地元自治体(市町村)と、市町村に助言する立場にある国・都道府県の二つが考えられる。運用法が確立されるまでは当面行政内部での利用とし、一般住民の利用は検討の対象としない。
また、利用者については、それぞれの運用主体における意思決定者層(以下「リーダー」という。)と、意思決定者を補佐する者の層(以下「フォロワー」という。)の二階層が考えられる。具体的には、市町村の場合、避難勧告等の発令の意思決定を行う市町村長もしくはこれに準ずる副市町村長や部課長クラスがリーダーに当たり、これを補佐するため意思決定に必要となる様々な情報を収集し意思決定者に提供する役割を担う担当者クラスがフォロワーに当たる。
これら運用モデルの型式は図-1のようになる。

DIGSUSSユーザーインターフェースの検討
前章で検討した4つの運用モデルを想定し、客観的情報・準客観的情報と、主観的情報・準主観的情報を視覚的に確認しやすいと考えられる画面構成を、まずは試験的に1つ作成し、モデルユーザーに試用してもらいユーザビリティーについて聞き取り調査を行い、改善点を確認する手法を採用した。
モデルユーザーは、市町村の防災担当者は人員が限られていること、当該システムが集中豪雨時の使用を想定していることから、市町村単位で試用調査を行う場合、調査期間が短いと対象事象に巡り会わない可能性があるため、今回は国交省九州地方整備局、および鹿児島県に試用調査(避難勧告助言者運用型の試用)に協力頂くこととした。また、利用者については、最も頻繁に利用することが想定されるフォロワーを試用の対象とした。
- keyword
- 国総研
- 土砂災害
- 安心、それが最大の敵だ
安心、それが最大の敵だの他の記事
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方