試作版システムの仕様

インターフェース仕様
試用調査に用いた試作版システムの仕様を以下に記述する。システムの開発にあたり、神山様ら(2014)により、雨量や災害に関連する情報を重ね合わせ一元的に表示することが災害時の状況把握に有効とされていることを参考に、地図上にレーダ雨量とツイート情報を重ね合わせて表示することとした。また、リアルタイムにツイートをタイムラインで表示する画面と地図表示画面を並べた構成とした(図-2)。

写真を拡大 図-2 試作版システムの画面・機能内容

(1)地図表示画面
客観的情報・準客観的情報を視覚的に確認しやすいように、位置情報付きのツイート、都道府県・市町村単位で場所推定したツイートは、画面の地図上の位置にマーカで表示した。また、降雨の状況が視覚的に分かるように、地図上にレーダ雨量を重ねて表示した。主なマーカや表示情報について以下に示す。
・GPSマーカ
ツイートに位置情報が付与されている場合に、地図上の該当位置にGPSマーカ(バルーン型のアイコン)を表示する。投稿時刻からの経過時間に応じてマーカの表示色を変化させ、12時間前までの投稿を表示することとした。また、地図上のGPSマーカをクリックすると、地図表示画面上でツイート本文が吹き出しで表示され、地図上からツイートを直接確認することができる機能を設けた。
・場所推定マーカ
本文やプロフィールからツイートの投稿場所が推定された場合に、地図上の該当場所に場所推定マーカ(円形のアイコン)を表示する。場所推定は都道府県・市町村レベルで実施する。過去1時間の投稿数に応じてマーカの表示色を変化させ、投稿数が増加した際に利用者に気付きを与えるためのブザー音が鳴る機能を設けた。また、地図上の場所推定マーカをクリックすると、地図表示画面上でツイート本文が吹き出しで表示され、地図上からツイートを直接確認することができる機能を設けた。
・レーダ雨量
ツイート場所を示すマーカ(GPSマーカ・場所推定マーカ)とともに、レーダ雨量(国土交通省Xバンドレーダ・Cバンドレーダを選択)を重ねて表示した。

(2)タイムライン表示機能
特に客観性が高い画像が添付されているツイートを視覚的に認識しやすいように、タイムラインにした。表示画面では、ツイート本文に並べて画像アイコンを表示。また、タイムライン表示画面で確認した位置情報付きのツイート、場所推定したツイートの場所を地図上で確認できるように、GPSアイコン、場所推定アイコンを表示した。主観的情報については、現在の検索エンジンでは場所推定が難しいものの、利用者が読めば関係する地域の者の投稿であることがおおよそ推定できるツイートも多数存在することから、場所推定は出来ていないが、キーワードのみで抽出されたツイートも表示することとした。一方で、関心がある地域に絞ったツイートを利用者が閲覧できるように、ツイートを表示する地域を「全国(場所推定できなかったツイートを含む)」「選択した都道府県(位置情報付き、場所推定できたツイートのみ)」「選択した市町村(位置情報付き、場所推定できたツイートのみ)」を切り替え表示できる機能を設けた。以下に、主なアイコンの機能を示す。
・画像アイコン
ツイートに画像が添付されている場合に表示した。アイコンをクリックすると、添付されている画像が表示される。
・GPSアイコン
ツイートに位置情報が付与されている場合に表示した。アイコンをクリックすると、地図上の該当位置に地図中心が移動し、GPSマーカが地図上でフォーカスされる機能を設けた。
・場所推定アイコン
本文やプロフィールからツイートの投稿場所が推定された場合に表示した。場所推定アイコンをクリックすると、地図上の該当位置(都道府県・市町村)に地図中心が移動し、場所推定マーカが地図上でフォーカスされる機能を設けた。
・収集キーワード
試作版システムでは、災害に関連するキーワードをTwitter API に対して検索することで、ツイートの収集を行っている。システム上の制約により、本試用調査では、災害発生前の状況や前兆現象を捉えること、および災害事象や災害発生後の状況をいち早く捉えることに着目し、表-2に示す10個のキーワードを設定した。

試用調査の結果

フォロワーは客観的情報の収集を行う傾向にあることが分かった。これは、フォロワーは、多くの災害対応業務を行いながらDIGSUSSの使用に割くことができる時間が限られているためと考えられる。また、一般的にリーダーに対して報告を行う際、客観的情報に比べて主観的情報を伝えることが難しいことも影響しているのではないかと考える。

このため、フォロワーの利用を想定した場合、客観的情報の抽出精度をより一層向上するほか、客観的情報の視覚的な確認のしやすさ、また、把握した情報を整理・報告しやすくするための機能を追加することが望ましいと考える。

今回は、リーダーでの試用調査を行うことが出来なかったため、リーダーに対して簡単な聞き取り調査を行ったところ、主観的情報は非常時の意志決定において有用であるとの主旨の回答を得た。このような結果から、DIGSUSSの開発を進めるに当たっては、リーダー、フォロワーの双方に対して汎用性の高いものを目指すのではなく、リーダーには主観的・客観的情報の両方を俯瞰的に確認できる機能を有したもの、フォロワーには客観的情報を迅速に確認しリーダーに報告することが可能な機能を有したものといった、それぞれの利用者層に特化したものとする方が有効である可能性が高いことが分かった。
(謝辞:国総研土砂災害研究部から論文や資料の提供に多大なご協力・ご理解を頂いた)

(つづく)