2018/01/22
安心、それが最大の敵だ
試作版システムの仕様
インターフェース仕様
試用調査に用いた試作版システムの仕様を以下に記述する。システムの開発にあたり、神山様ら(2014)により、雨量や災害に関連する情報を重ね合わせ一元的に表示することが災害時の状況把握に有効とされていることを参考に、地図上にレーダ雨量とツイート情報を重ね合わせて表示することとした。また、リアルタイムにツイートをタイムラインで表示する画面と地図表示画面を並べた構成とした(図-2)。

(1)地図表示画面
客観的情報・準客観的情報を視覚的に確認しやすいように、位置情報付きのツイート、都道府県・市町村単位で場所推定したツイートは、画面の地図上の位置にマーカで表示した。また、降雨の状況が視覚的に分かるように、地図上にレーダ雨量を重ねて表示した。主なマーカや表示情報について以下に示す。
・GPSマーカ
ツイートに位置情報が付与されている場合に、地図上の該当位置にGPSマーカ(バルーン型のアイコン)を表示する。投稿時刻からの経過時間に応じてマーカの表示色を変化させ、12時間前までの投稿を表示することとした。また、地図上のGPSマーカをクリックすると、地図表示画面上でツイート本文が吹き出しで表示され、地図上からツイートを直接確認することができる機能を設けた。
・場所推定マーカ
本文やプロフィールからツイートの投稿場所が推定された場合に、地図上の該当場所に場所推定マーカ(円形のアイコン)を表示する。場所推定は都道府県・市町村レベルで実施する。過去1時間の投稿数に応じてマーカの表示色を変化させ、投稿数が増加した際に利用者に気付きを与えるためのブザー音が鳴る機能を設けた。また、地図上の場所推定マーカをクリックすると、地図表示画面上でツイート本文が吹き出しで表示され、地図上からツイートを直接確認することができる機能を設けた。
・レーダ雨量
ツイート場所を示すマーカ(GPSマーカ・場所推定マーカ)とともに、レーダ雨量(国土交通省Xバンドレーダ・Cバンドレーダを選択)を重ねて表示した。
(2)タイムライン表示機能
特に客観性が高い画像が添付されているツイートを視覚的に認識しやすいように、タイムラインにした。表示画面では、ツイート本文に並べて画像アイコンを表示。また、タイムライン表示画面で確認した位置情報付きのツイート、場所推定したツイートの場所を地図上で確認できるように、GPSアイコン、場所推定アイコンを表示した。主観的情報については、現在の検索エンジンでは場所推定が難しいものの、利用者が読めば関係する地域の者の投稿であることがおおよそ推定できるツイートも多数存在することから、場所推定は出来ていないが、キーワードのみで抽出されたツイートも表示することとした。一方で、関心がある地域に絞ったツイートを利用者が閲覧できるように、ツイートを表示する地域を「全国(場所推定できなかったツイートを含む)」「選択した都道府県(位置情報付き、場所推定できたツイートのみ)」「選択した市町村(位置情報付き、場所推定できたツイートのみ)」を切り替え表示できる機能を設けた。以下に、主なアイコンの機能を示す。
・画像アイコン
ツイートに画像が添付されている場合に表示した。アイコンをクリックすると、添付されている画像が表示される。
・GPSアイコン
ツイートに位置情報が付与されている場合に表示した。アイコンをクリックすると、地図上の該当位置に地図中心が移動し、GPSマーカが地図上でフォーカスされる機能を設けた。
・場所推定アイコン
本文やプロフィールからツイートの投稿場所が推定された場合に表示した。場所推定アイコンをクリックすると、地図上の該当位置(都道府県・市町村)に地図中心が移動し、場所推定マーカが地図上でフォーカスされる機能を設けた。
・収集キーワード
試作版システムでは、災害に関連するキーワードをTwitter API に対して検索することで、ツイートの収集を行っている。システム上の制約により、本試用調査では、災害発生前の状況や前兆現象を捉えること、および災害事象や災害発生後の状況をいち早く捉えることに着目し、表-2に示す10個のキーワードを設定した。
試用調査の結果
フォロワーは客観的情報の収集を行う傾向にあることが分かった。これは、フォロワーは、多くの災害対応業務を行いながらDIGSUSSの使用に割くことができる時間が限られているためと考えられる。また、一般的にリーダーに対して報告を行う際、客観的情報に比べて主観的情報を伝えることが難しいことも影響しているのではないかと考える。
このため、フォロワーの利用を想定した場合、客観的情報の抽出精度をより一層向上するほか、客観的情報の視覚的な確認のしやすさ、また、把握した情報を整理・報告しやすくするための機能を追加することが望ましいと考える。
今回は、リーダーでの試用調査を行うことが出来なかったため、リーダーに対して簡単な聞き取り調査を行ったところ、主観的情報は非常時の意志決定において有用であるとの主旨の回答を得た。このような結果から、DIGSUSSの開発を進めるに当たっては、リーダー、フォロワーの双方に対して汎用性の高いものを目指すのではなく、リーダーには主観的・客観的情報の両方を俯瞰的に確認できる機能を有したもの、フォロワーには客観的情報を迅速に確認しリーダーに報告することが可能な機能を有したものといった、それぞれの利用者層に特化したものとする方が有効である可能性が高いことが分かった。
(謝辞:国総研土砂災害研究部から論文や資料の提供に多大なご協力・ご理解を頂いた)
(つづく)
- keyword
- 国総研
- 土砂災害
- 安心、それが最大の敵だ
安心、それが最大の敵だの他の記事
おすすめ記事
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方