2018/01/19
編集長コラム「うラかたの日々」

今週の1月17日は、阪神・淡路大震災から23年でした。当日の自分のことはFBに書かせていただきましたので、もしよろしければこちらも合わせてご覧ください。
さて、兵庫県立大学減災復興政策研究科長の室﨑益輝教授が、ご自分のFBで、阪神・淡路大震災を振り返りながら以下のような示唆に富む書き込みをされていました。
「震災直後の教訓と20年が経過した現在との教訓とは、「別次元」で考えなければならない。20年たったからこそ、「より高い視点&より広い視覚」から、教訓を引き出すことができる。それだけに、20年前と同じ「1.17」と「教訓」を繰り返していてはならない」
この言葉を、私たちはとても重く受け止めなければいけないと思いました。20年前と同じ教訓を繰り返して語るのではなく、20年経ったからこそ、より俯瞰(ふかん)した立場で新しい教訓を引き出さなければいけない、と。今週のあんどうりすさんのコラムは、まさにそのような内容でした。
■地震対策「お風呂に水をためる」は、正しい?嘘?
世代間の争いの火種になっている情報を検証!
http://www.risktaisaku.com/articles/-/4578
「地震対策=お風呂に水をためる」ことは阪神・淡路大震災以降、盛んにいわれてきたことでした。一方で、子育て世代には「危険なこと」とされている。こんな小さなことが、防災を「めんどうくさいこと」の1つにしてしまっているのかもしれません。ここで気をつけないといけないことは、あんどうさんも書かれているように「お風呂に水をためること」が「間違い」ではないことです。災害が発生すれば、水はたちどころに必要になります。その時にお風呂に大量の水があれば、使い道がないとは言いきれません。
私たちが考えなければいけないのは、「地震対策=お風呂に水をためる」と硬直的に考えてしまうことの是非です。そして「お風呂に水をためていない=地震対策の意識が低い」という逆が「真」ではないことを理解することです。それこそが、室﨑先生のおっしゃる「『より高い視点&より広い視覚』から、教訓を引き出すこと」なのではないでしょうか。
経営書としてもよく読まれる名著「失敗の本質」では、組織の「シングル・ループ学習」「ダブル・ループ学習」について言及されています。この2つについてはネットのなかでさまざまに紹介されているのでそちらをご覧いただくとして、防災や危機管理もさまざまな変化に柔軟に対応できる「ダブル・ループ学習」で考えなければいけないと、思いを新たにしました。
さて、最後に今週の気になるニュースはこちら。
■東京2例目の鳥インフル、大田区で発見
都、養鶏農家や学校などに衛生管理要請
http://www.risktaisaku.com/articles/-/4571
東京都大田区で発見されたオオタカから検出された鳥インフルは、昨年末香川で確認されたものと同じ「H5N6亜型」。鳥インフルエンザの中でもヒトへの危険性が高い「H5N1型」「H7N9型」には該当せず、ヒトへ感染する危険性は極めて低いとされていますが、企業のBCP担当者の皆さん、インフルエンザも流行しているこの時期ですので、もう一度自社の感染症マニュアルを見直してみてはいかがでしょうか。弊誌でも何度か記事にしておりますので、よろしければご覧ください。
■BCP担当者が最低限おさえておきたいインフルエンザ特措法
http://www.risktaisaku.com/articles/-/539
■マスクの基礎知識 フィットテストを怠るな!
http://www.risktaisaku.com/articles/-/542
■うがいの基礎知識 ガラガラってする?声を出す??
http://www.risktaisaku.com/articles/-/541
■手洗いの基礎 アルコール洗浄だけでいいと思っていませんか?
http://www.risktaisaku.com/articles/-/540
それでは、また。
(了)
編集長コラム「うラかたの日々」の他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2023/02/07
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2023年2月7日配信アーカイブ】
【2月7日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:客の迷惑行為に企業・社会はどう対応する?
2023/02/07
-
BCPの実効性が高い企業と低い企業の差
リスク対策.comは、企業が自然災害や感染症などに備えてどのような訓練・演習をどの程度行っているのかを把握するため、2022年10月17日~24日にインターネットによるアンケート調査を実施、310件の有効回答を得ました。第3弾の結果報告となる今回は、BCPの実効性を高いと考えている企業とそうでない企業における差について解説します。
2023/02/05
-
最終的には「死生観」と向き合わざるを得ない
転換点を迎えた新型コロナ政策。各国・各地が徐々に関連規制を緩和、撤廃し始め、日本政府も感染症法上の位置づけを5類に移行する方針を決めました。社会は元の状態に戻るのか、どのような課題が残されているのか。感染対策と社会・経済活動の両立にかかる分析・シミュレーションを発信してきた東京大学大学院の仲田泰祐准教授に聞きました。
2023/02/05
-
LGBT社員の雇用上の留意点
先般、LGBTに対する差別的発言を巡り、首相秘書官が更迭されました。LGBTについては、社会の理解も少しずつ深まってきており、諸外国ではLGBTの権利を認める法律の整備も進んでいますが、日本は世界の中でもLGBTの受容度が低い国とされており、OECD加盟国の中では36か国中25位となっています。日本では、全人口に対して7~9%の割合でLGBT の人が存在しているとされ、30人規模の職場であれば、2〜3人程いることが想定されます。ただ、実際にはカミングアウトしていない人も一定数存在することから、潜在的人数は不明です。ダイバーシティ&インクルージョンの重要性が謳われる中、企業においては、LGBTの人にとっても働きやすい職場環境を整備することが必要となっています。
2023/02/05
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2023年1月31日配信アーカイブ】
【1月31日配信で取り上げた話題】家庭での防災行動を高めるために
2023/01/31
-
-
1000人に聞いた防災の取り組みと行政への期待
リスク対策.comは、地域住民がどの程度防災に取り組んでいるのか、また防災の観点から行政に対してどのような要望を持っているのかなどを把握する目的でインターネットによるアンケート調査を実施した。その結果、2021年5月から避難勧告が廃止され避難指示に一本化されたことについては約5割しか理解していないことや、平時から国や地方自治体の防災のホームページなどがあまり活用されていない実態が明らかになった。調査は、2022年11月21日から22日にかけてインターネット上で行い、全国の20歳以上の成人男女1000人からの回答を得た。質問は、回答の質を高めるため「この質問は一番右の回答をお選びください」という条件項目を入れ、適切な回答をしなかったものを除き、計889人を有効回答として分析した。
2023/01/30
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方