いま全方位対応のBCPが求められる背景は(写真:写真AC)

■オールハザードとマルチハザード

2021年2月、一般社団法人日本経済団体連合会は「オールハザード型BCPへの転換」を提言しました。「オールハザード型BCP」とは、文字通り、どんな危機に直面してもそれらを乗り越えられるような仕組みを持つBCPのことです。あたかも、体内に入ってきた異物(リスク)が何であれそれを撃退する免疫細胞のような機能を果たせるBCP、全方位対応のBCPと呼んでもよいでしょう。

一方「マルチハザード」もまた、「オールハザード」と同じような意義・目的を持った言葉です。ニュアンス的に前者は「多数の」「多角的な」であり、数的には有限な印象を持ちますが、後者は文字通り「すべての」「あらゆる」と見なせるのではないかと思います。

両者は東日本大震災以降によく見聞きするようになった言葉です。「東日本大震災では不測の事態が多発してBCPが機能しなかった。だからこそオールハザードやマルチハザード対応のBCPが必要なのだ」という意見が散見されました。

リスクが多様化している(写真:写真AC)

これらの言葉がより切迫性を持ってビジネスの世界で使われるようになった背景には、地震のみならず近年の気候変動に伴う豪雨災害の多発や今回のパンデミックがあるでしょう。さらには、情報システムや制御システムを狙ったサイバー攻撃が増え続けていることも、全方位のリスク対応の必要性が現実味を帯びてきたことの証ではないでしょうか。