2018/04/12
熊本地震から2年、首長の苦悩と決断
市民を落ち着かせるために電気をつけた
本震の直後にやったことは、とにかく人が集まる場所は電気をつけさせたということ。停電がない地区では、照明のあるグラウンドはすべて、学校も体育館や校舎は全灯することにしました。そうしたら皆さんがそこに寄ってくるし、目印にもなる。明かりをつけたほうが人は落ち着くし、安心させられると思いました。
庁舎が使えない状況で、人手も全く足りませんでした。防災計画上は、避難所運営は教育委員会が担当することになっていますが、教育委員会は40人で直後に15カ所の避難所が開設されていますからまったく足りない状態です。職員は250人いますが、約半分が避難所運営に携わっていた状況です。この状況が数日間続いたと思います。想定内でつくった計画と想定外の災害は違うということを改めて感じました。
トップが悩んでいてはいけない
特に感じたのは、首長が悩んでいたら駄目ということ。どうしようか、どうしようかと言っていたら、誰にも信頼してもらえなくなるので、これでいこうと決めたら、貫くしかない。会議でどうしようかという話をしても、なかなか決まらない。ならば、とにかく動こう、迷った時点で動こうということを私はずっと心掛けてきました。
ただ、職員からの「ちょっと待ってくれ」という意見は聴き入れました。例えば、水道です。最初のうちは水が濁っていたので、水を止めるという話だったのですが、そんなことをしたら生活が困るので、防災無線で水を飲まないように放送をして、水は流し続けようと決めたのですが、所管部長から「ちょっと待ってくれ、これは命にかかわることで、感染症でも広まったら大変なことになる、これは絶対やってはいけないことです」と叱られて止めました。そこは聞いてよかったと思います。間違ったことがあれば指摘してくれということは会議のたびにいつも言ってきたことです。
とにかくスピードが一番
大切なのは今できることは後回しにしないでやるということ。極端な話、非常食5000食が要るのに3000食しかない場合、5000食が来るまで待とうとしては駄目です。結局、配るのに時間がかかるわけですから、3000食をまず配ること。スピードを重視して、今できることを絶対後回しにしないことが大切だと思います。
震災直後は非常に悪い情報ばかりしか入ってこないし、全体像がつかめない状況で、現場が見たいと思っても、市長は対策本部にいないといけないと言われる。では、どうしようかと考えている中で思ったのが、とにかくスピードが一番ということです。今やれることを今やっておかないと、後から必ずクレームになるのです。職員にとって一番きついのは、体を動かすことではなく、クレームを受けることです。
他人任せにしない
他人任せにしていてはだめだと思います。例えば、国から何か困っていることはないですかと聞かれたら、部下に検討しろと言うのではなく、自ら大げさなぐらいに「今こういう状況で困っています」と即座にしっかり伝える。その結果、国からもいろいろな支援を早い段階からいただいたと感じています。トップは、最終的に決断する人ですから、強烈なリーダーシップが絶対要ると思っています。ここを他人任せにして、部下に検討してくださいと言っても、災害時には検討に加わるべき職員が飛び回っているので、現場でゆっくり検討する時間はありません。
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