2018/04/12
熊本地震から2年、首長の苦悩と決断
必要な業務以外はすべて停止
庁舎が被災したということもあって、必要な業務以外は全部停止しました。住民票や納税の証明、罹災証明以外は全部止めました。そうしないと現場が回らない。その他の職員は全員、市内全域の避難所に散らばっていた状況でした。

現場の声を吸い上げる
小さなことでもいいから、部下が現場で住民から言われたことがあれば、それをすべて拾い上げてくれと指示しました。それが判断材料になると思うのです。例えば、ここはブルーシートをかけておかないと雨が降ったら崖崩れが起きるかもしれないというような話を積み重ねていかないと判断はできません。担当部局だけがわかっているような問題も気を付けました。他の部局からは何の質問も出ないわけです。私も現場回りの職員に声をかけて、小さなことでもいいからと、現場の声を吸い上げるようにして、本部会議では、こんな声が上がっていると紹介するようにしました。こうした部門間の隔たりを超える疑問を投げかけることが大切だと思います。
人手が足りないからできないは言い訳
人手が足りないからできないというのは、言い訳でしかないと思っています。今何をやらなければならないのかというところが大事であって、できる、できないはその後。では、どうすればできるのか考えなくてはいけません。人がいないというのは、もっともな話ですが、では、どうすれば人を増やせるのか。よそにかけ合って、応援に来てもらうとか、職員ができないことを、できるようにしてあげることが首長の仕事なのだと思います。職員から「どうしますか?」と聞かれたら「どうしたいか」と聞くようにしました。何をしたいのかを明確にすることが大切だと思うのです。
手伝ってもらうのではなく任せる
ボランティアには、物資の配布はもちろん、見回りもしてもらいました。市役所の職員はほとんど災害対応で出払っている状況だったので、大きな助けとなりました。また、ボランティアの方と接することで、市民の方にも「全てやっていただくのは申し訳ない。私も手伝います」と参加いただけた場面もありました。ボランティアを手伝いと思ったら駄目で、任せること。任せられることは任せるということ。その際、「手伝ってもらう」と言うのではなく「任せる」としっかり伝えることが大切です。このことは、他の自治体にも参考になると思います。
「任せる」ということは職員に対しても同じで、その時点で重要な業務以外はすべて止めますから、選挙管理事務局や農業委員会の部署などの職員には災害対応業務をやってもらう必要がありますが「手伝ってくれ」と言えば、「自分の仕事ではないのに」と、モチベーションが下がります。今日も、明日も、ずっと手伝いになってしまいます。そうではなく「これはあなたたちの仕事として任せましたよ」と、しっかり伝えることを心掛けました。
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