2017年12月11日に東京五輪選手村予定地近くの東京港晴海客船ターミナルで行われた、「東京港テロ対策合同訓練」

あと2年で2020年です。この年、日本で何が開催されるのか、皆さまご存知ですね。今月から2020年とその先に向けたセキュリティ対策についてお話しします。

バトンは日本へ

2020年、東京に世界最大のスポーツの祭典がやってきます。1964年以来、56年ぶりに東京で再び熱戦が繰り広げられます。国内の関連市場は活気づき、2020年へ向かって動き続けています。一方、この祭典に関するセキュリティ事情を考えたとき、世界の注目を集めるビッグイベントというものは、テロリストの大好物であり、テロ攻撃の恰好のターゲットとなることを私たちは認めなければなりません。さて、どうしましょうか?

2016年の夏、リオに世界中が熱狂しました。リオで行われたスポーツの祭典は、心配されたテロや深刻な犯罪によって中断されることなく無事に閉幕しました。平和の祭典を平和のうちに終わらせる、ここにブラジルは国の威信をかけました。

軍と警察合わせて史上最多の8万5000人を動員し、来伯するVIP、アスリート、観戦者、観光客の安全を守り抜きました。スタジアムや選手村、VIP宿泊ホテルなどの主要ポイントには、機関銃を構えた軍を配置し、「何か起こせば撃つぞ」「有事には軍の力で制圧するぞ」という『見せる警備』を行いました。結果、開催期間中にテロのような重大事は発生せず、リオ開催は成功ということになりました。

さて、次は日本の番です。2020年、私たちはどのような警備を行うのでしょうか?マシンガンを持った人間がそこかしこにいるというリオのような『見せる警備』は、日本らしくありません。テロの脅威が高まっている、またはテロが発生する危険があるという明らかな情報でもない限り、日本はセキュリティとホスピタリティのバランスを取りながら警備を行うはずです。東京オリンピック・パラリンピックのセキュリティ関係オフィシャルスポンサーには、ゴールドパートナーとしてNECが、オフィシャルパートナーとしてセコムやALSOKが名を連ねています。警察のリーダーシップのもと、これらの企業がどのようなセキュリティ対策を打ち出すのか、世界中が見守っています。見守っている人々の中にはテロリストも当然おりますので、お忘れなきように。

大会を成功に導き、2024年の開催都市パリへ五輪のバトンを無事に繋げるために行わなければならない『Must』、山ほどあります。『Must』の実施と実現は日本の役目です。『Must』によって安全と安心を約束することは、2020年の開催国の責任です。

リオ2016の警備態勢(出典: Wikimedia Commons)

関係がない人はいない

とはいうものの、セキュリティ対策に完璧はありません。テロを100%防ぐことはできません。好きな時間に好きな場所を好きな方法で攻撃してくるテロリストを24時間警戒することは不可能です。しかし、セキュリティ対策を完璧に近づける方法があります。それは、人々を巻き込むことです。

セキュリティ対策は、警察、警備員、セキュリティボランティアだけに任せておけばOKというものではありません。一般の人々を巻き込むことで、セキュリティレベルを向上することが可能になります。今まで「玄関の鍵はかけたかな?」とか「うちにも監視カメラをつけようかしら」などの内側に向いていたセキュリティ意識を、外側にも向けてもらうことで、日本全体のセキュリティレベルが高まっていきます。セキュリティ意識を持つ人々の目は、「これおかしいな」「いつもと違うな」という日常生活に存在する『不審者/物』や『脆弱部分』を見つけることができます。それらの発見を警察等関係機関へフィードバックするようになると、非常に重要な情報が集まる可能性が高まります。ひとりひとりがセキュリティ意識を高めると、テロや犯罪の実行前にその攻撃を阻止することができるかもしれません。セキュリティ対策を完璧に近づけていくことができるのです。

セキュリティに意識を向ける人が増えると、死角が減り、情報が集まり、事前に危機を察知できるようになります。安全だと言われ続ける日本がこれからも安全であり続けるために、ここで暮らす自分たちの安心のために何をすべきかを考えてください。私たちひとりひとりがセキュリティの当事者なのです。セキュリティ対策に協力するという意識を持って行動する。2020年を迎える日本では、この意識を持つ人々を増やすことが必要です。

来月は、私たちひとりひとりのセキュリティ意識を高めるためにすべきこと『Should』と、私たちが決してやってはいけない『Must Not』についてお話したいと思います。ご意見・ご感想をお待ちしております。

(了)