そもそもPCR検査とは何か、なぜコロナ診断に用いるべきではないのか(写真:写真AC)

日本政府の新型コロナ対策を批判するやり玉に当初より上がっていたのが、PCR検査だ。それまでは一般的に馴染みのない言葉だったが、日本の対応力のなさにメディアの攻撃が激しく、無症状者からの感染リスクがあることからも感染抑止策としてのPCR検査徹底が叫ばれ続けていた。

しかし、徹底検査を実施して感染を抑止した成功事例は世界中探しても存在しない。それでも検査センターに年末年始、長蛇の列ができる状況になるほど、多くの国民はPCR検査に安心を求め続けている。

そもそもPCR検査とは何なのか、理解している人はほんのわずかではないだろうか。

「PCRを感染症の診断に用いてはならない」の意味は(写真:写真AC)

PCRとは米国のキャリー・マリス博士によって発明された技術で、DNAポリメラーゼを用いた連鎖的に増幅する拡散合成法でありPCR(polymerase chain reaction)と名付けられた。同博士は、この功績もあってノーベル化学賞を受賞している。2019年に亡き人となったが、生前に残した次のコメントが印象的である。「PCRを感染症の診断に用いてはならない」

PCR検査の実態

この手法は遺伝子配列を可視化するために遺伝子の一部を倍々と複製して、遺伝子の一部の存在を検出する。これは、感染力を失ったウイルスの断片でも検出し陽性と判定するだろうし、感染力を持たない微量のウイルスでも陽性と判定される。

PCR法で複製するサイクルをCt値と呼び、当初日本は45サイクルに定められていたようだが、この場合10個ほどのウイルスの存在で陽性と判定されてしまう。この程度のウイルス量で感染はほぼあり得ないのにだ。

このCt値は米国で37~40、台湾で35に定められており、10サイクルで1000万個以上、20サイクルで10万個以上、30サイクルで1000個以上検出されることから、台湾の設定値が適切だとの見解を多く耳にする。

PCR法はDNA配列解析を進歩させヒトゲノムの解明に寄与する等、貴重な発明であり、医療だけでなく農業や工業などさまざまな分野で活用されている。もちろん疫学調査にも有効な手法であることは疑いようがない。しかし、臨床判断、確定診断への活用には、弊害もあり、実は異論も多いことを忘れてはならない。