2018/06/19
巧妙化するサイバー攻撃に備えよう!
規制適用受ける日本企業は
日本ではどのような企業がGDPRの適用を受けるのか。大きく2つのパターンがある。最も典型的なパターンは「EEA域内に子会社や支店などの拠点がある」企業。すでに現行のデータ保護法の適用を受けており、5月25日の施行以降は、EEA域内の拠点においては旧来のデータ保護法とGDPRとの差分を把握して、その延長で対応すればよい。同時に日本国内の本社拠点でも、EEA域内の拠点から日本国内の拠点への個人データの移転において新たな体制づくりが必要だ。
もう一つのパターンは「EEA域内にいる個人に対してインターネットなどを通じて商品やサービスを提供している企業」。この場合、EEA域内に拠点がなくとも、一定の要件を満たす個人データの取扱いにGDPRが適用される。これまで旧来のデータ保護法とは無関係だった企業でも、今回のGDPR施行によって初めてEUの個人データ保護法が適用される企業が出てくることがあり得る。規模の大小や営利・非営利を問わず適用されるので、インターネット等を通じてEEA域内の個人データを取り扱う企業は、GDPRの適用の有無に注意を払う必要がある。
もっともインターネット通販のあらゆるサイトが直ちにGDPRの適用を受けるわけではない。「GDPRでは、言語・通貨・顧客への言及といった要素を考慮して、『EEAに対する商品やサービスの提供の意図が明白』と言える場合に域外適用があるとされており、自社の事業の態様が要件を満たすかどうかを見極めることが肝要だ」と石井氏は冷静に検討・判断すべきと促す。
現地データ保護機関に相談する
GDPRの概要を把握できたら、自社内で取り扱うデータのうちどの範囲で適用の可能性があるかを個別に検証する必要がある。取り扱う個人データには、顧客情報だけでなく、取引先担当者、従業員、採用候補者のデータまで含まれる。日本国内のみで事業活動する企業であっても、例えば展示会に行けば海外企業の出展ブースも多く、EU域内の担当者と名刺交換をすることもあるだろう。厳密にはEEA域内の個人データを全く持たない企業の方が少ないとも言える。適用の有無をはじめとして、わからないことがあれば、専門家に相談することになる。
石井氏が勧めるのは「EEA域内の現地のデータ保護機関から直接情報収集すること」。「例えば日本の個人情報保護法に関してわからないことがあれば、当委員会の個人情報保護法相談ダイヤルに問い合わせる。それと同じように、日本企業も、GDPRに関しては、その解釈適用を担うEEA各国のデータ保護機関に直接問い合わせるのが確実で一番の近道」(同)という。EU域内に拠点を有する企業であれば、当該拠点のある国のデータ保護機関に問い合わせ、EU域内に拠点を有しない企業であれば、商品・サービス提供のターゲットとする国のデータ保護機関に問い合わせることも、有効な手段といえる。

巧妙化するサイバー攻撃に備えよう!の他の記事
- 社内チャットをメールと一体で提供
- 急ピッチで進む重要インフラのサイバー攻撃対策
- EU個人データ保護法「GDPR」施行
- システム切り替えの自動化ソリューション
- LINE、ヤフーやアマゾンなどと啓発
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/07/01
-
-
-
「ビジネスイネーブラー」へ進化するセキュリティ組織
昨年、累計出品数が40億を突破し、流通取引総額が1兆円を超えたフリマアプリ「メルカリ」。オンラインサービス上では日々膨大な数の取引が行われています。顧客の利便性や従業員の生産性を落とさず、安全と信頼を高めるセキュリティ戦略について、執行役員CISOの市原尚久氏に聞きました。
2025/06/29
-
-
-
柔軟性と合理性で守る職場ハイブリッド勤務時代の“リアル”な改善
比較サイトの先駆けである「価格.com」やユーザー評価を重視した飲食店検索サイトの「食べログ」を運営し、現在は20を超えるサービスを提供するカカクコム(東京都渋谷区、村上敦浩代表取締役社長)。同社は新型コロナウイルス流行による出社率の低下をきっかけに、発災時に機能する防災体制に向けて改善に取り組んだ。誰が出社しているかわからない状況に対応するため、柔軟な組織づくりやマルチタスク化によるリスク分散など効果を重視した防災対策を進めている。
2025/06/20
-
サイバーセキュリティを経営層に響かせよ
デジタル依存が拡大しサイバーリスクが増大する昨今、セキュリティ対策は情報資産や顧客・従業員を守るだけでなく、DXを加速させていくうえでも必須の取り組みです。これからの時代に求められるセキュリティマネジメントのあり方とは、それを組織にどう実装させるのか。東海大学情報通信学部教授で学部長の三角育生氏に聞きました。
2025/06/17
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方