2018/06/19
巧妙化するサイバー攻撃に備えよう!
日EU間の越境移転規制は緩和へ
個人データの越境移転について、現在、日本とEUの間で規制緩和が模索されている。
現時点のGDPRでは、個人データをEEA域内から域外に越境移転することを原則禁止している。越境移転する場合の条件として主に以下の4つを挙げている。①移転先の国が十分な水準の個人データの保護を確保していると欧州委員会によって認められていること、②「標準契約条項(SCC:Standard Contractual Clauses)」による契約を締結すること、③事業者グループにおける内部規範である「拘束的企業準則(BCR:Binding Corporate Rules)」を採用すること、あるいは④本人の明示的な同意を得ることー。日本は①のいわゆる「十分性認定」の条件を満たす国とは認められておらず、現状では②SCCの締結や③BCRの採用の手続きが必須となっている。
日本の個人情報保護法も、昨年5月30日に全面施行された改正法で同様にEUを含めた越境移転を規制するフレームワークをもっている。今回のGDPR施行を契機として、EUと日本との間でお互いに個人データを円滑に越境移転できる枠組みの構築に向けて、個人情報保護委員会と欧州委員会との間で協議が続けられており、5月31日には委員レベルの会談において重要な進展がみられた。
この枠組みが構築されれば、EEA域内から日本へ個人データを移転する際、SCCの締結やBCRの採用が不要となる。ただし「越境移転の規制はGDPRの規制の一部に過ぎず、この枠組みの構築によってGDPRの規制から一切免れるという誤解をしないでほしい」(石井氏)とする。

ビジネスのグローバル化と同時に、クラウド・AI・IoTなどの普及でさまざまな個人データが容易に国境を越えてしまう時代。日本企業であっても規制の適用を受ける企業が少なくないと考えられる。石井氏は「今後も当委員会では各国のデータ保護機関との意見交換・情報交換等を進めていく。これらを通じて、日本国内の企業がGDPRとの関係を見極めていただくのに有用な情報があれば、積極的に提供することで、支援していきたい」と話している。

■個人情報保護委員会によるGDPR関連ページ(GDPRガイドラインの仮日本語訳/EU域内のデータ保護機関へのリンクあり)
https://www.ppc.go.jp/enforcement/cooperation/cooperation/GDPR/
■日本貿易振興機構(JETRO:ジェトロ)が日本企業向けに対応策をまとめた「GDPR実務ガイドブック」
https://www.jetro.go.jp/world/reports/2016/01/dcfcebc8265a8943.html(入門編)
https://www.jetro.go.jp/world/reports/2017/01/76b450c94650862a.html(実践編)
(了)
巧妙化するサイバー攻撃に備えよう!の他の記事
- 社内チャットをメールと一体で提供
- 急ピッチで進む重要インフラのサイバー攻撃対策
- EU個人データ保護法「GDPR」施行
- システム切り替えの自動化ソリューション
- LINE、ヤフーやアマゾンなどと啓発
おすすめ記事
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/08/26
-
-
ゲリラ雷雨の捕捉率9割 民間気象会社の実力
突発的・局地的な大雨、いわゆる「ゲリラ雷雨」は今シーズン、全国で約7万8000 回発生、8月中旬がピーク。民間気象会社のウェザーニューズが7月に発表した中期予想です。同社予報センターは今年も、専任チームを編成してゲリラ雷雨をリアルタイムに観測中。予測精度はいまどこまで来ているのかを聞きました。
2025/08/24
-
スギヨ、顧客の信頼を重視し代替生産せず
2024年1月に発生した能登半島地震により、大きな被害を受けた水産練製品メーカーの株式会社スギヨ(本社:石川県七尾市)。その再建を支えたのは、同社の商品を心から愛する消費者の存在だった。全国に複数の工場があり、多くの商品について代替生産に踏み切る一方、主力商品の1つ「ビタミンちくわ」に関しては「能登で生産している」という顧客の期待を重視し、あえて現地工場の再開を待つという異例の判断を下した。結果として、消費者からの強い支持を受け、ビタミンちくわは過去最高近い売り上げを記録している。一方、BCPでは大規模な地震などが想定されていないなどの課題も明らかになった。同社では今、BCPの立て直しを進めている。
2025/08/24
-
-
-
-
ゲリラ豪雨を30分前に捕捉 万博会場で実証実験
「ゲリラ豪雨」は不確実性の高い気象現象の代表格。これを正確に捕捉しようという試みが現在、大阪・関西万博の会場で行われています。情報通信研究機構(NICT)、理化学研究所、大阪大学、防災科学技術研究所、Preferred Networks、エムティーアイの6者連携による実証実験。予測システムの仕組みと開発の経緯、実証実験の概要を聞きました。
2025/08/20
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方