個別避難計画作成のモデル団体から学べることは(写真:写真AC)

2021年5月の災害対策基本法改正にともない、市区町村が高齢者・障がい者等の避難行動要支援者について個別避難計画を作成することが努力義務となった。そして内閣府は2021年度、個別避難計画の効果的な作成手法を全国に展開するモデル事業を実施した。

2022年3月15日、この事業に参加した全モデル団体(34市区町村、18都府県)と本事業のアドバイザリーボード委員が出席して、成果を全国にオンラインで発信する「成果発表会」を開催した。
https://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/r3modelseika.html

このモデル事業には、非常に多様で深みのある取り組みがある。個別避難計画を担当する市区町村職員や関係者は、上記報告書と後日公表される動画をぜひご覧いただきたい。私はこのアドバイザリーボードの座長を務めていたので、この取り組みについて感じたことを簡潔に述べてみたいと思う。

まず、この厳しいモデル事業に挑戦いただいた自治体職員の皆様に心から敬意を表したい。コロナ禍の厳しい状況で、よくぞ1年間、走り続けてくださった。そして、それぞれに地域性を活かした素晴らしい取り組みをしてくださった。深く、深く感謝申し上げる。

私がこのモデル事業から学ばせていただいたことを3点にまとめて申し上げたい。

個別避難計画は良い地域社会をつくる

第1に、個別避難計画づくりは良い地域社会づくりにつながることである。

避難行動要支援者に向き合うとは(写真:写真AC)

個別避難計画作成は、わが国の防災、福祉、コミュニティー政策でおそらく最大のチャレンジになる。それは、実効性ある計画をつくるためには、平時も災害時も高齢者・障がい児者らが生きがいと尊厳をもてる地域社会が求められるからだ。自治体は計画づくりをきっかけに、避難行動要支援者一人一人に向き合うことになる。

職員の熱意は、要支援者の主体性を引き出し、周りの人々にも早期避難の大切さを訴えるであろう。いくつものモデル自治体から、当事者と支援者双方より避難する意欲、避難できるという実感が高まった、という報告が上がっている。

コミュニティーの人々や福祉専門職が要支援者とともに話し合う地域調整会議の場をつくることがとても重要である。地域のつながりを確かなものとし、災害時だけでなく、平時にも支え合いのできる地域社会をつくる基盤となっていくに違いない。