2016年の熊本地震でもブロック塀の犠牲者が

私たちは、なぜ、この事故を避けることができなかったのでしょう。1978(昭和53)年の宮城沖地震からの教訓ということは今回、たくさん報道されました。もちろんそうです。でも、2016年の年熊本地震で29歳の坂本龍也さんの命を奪ったのが、まさしくこの擁壁の上にあるブロック塀だったのです。

擁壁の高さは2mで、その上にあったブロック塀が2.15mでした。それだけでなく、支えとなる控え壁がないことまで同じです。1978年のことを継承していなくても、2016年の教訓はたった2年前のことです。なぜ教訓が継承されないのでしょう?もっとわかりやすく伝えねばならなかったと本当に悲しく思っています。

今回の事故で、一刻も早く違法なブロック塀の撤去が進むことを願っています。ところが、実は、古いブロック塀ほど違法ではなくなってしまうという困った問題があります。

1978年の宮城沖地震でブロック塀の倒壊により18人が死亡。その教訓を受けて1981年に建築基準法が改正され、塀の高さの上限は3mから現在の2.2mに引き下げたほか、強度を補うために高さ1.2メートルを超える塀には、「控え壁(ひかえかべ)」と呼ばれる壁の設置条件を厳しくするなど、耐震を強化しました。

高槻市で倒れたブロック塀は、基礎部分は1973(昭和49)年に設置が確認されています。その上に積んだブロック塀について、市側は「時期は不明」としながらも、改正建築基準法以降に設置された可能性が高く、また「控え壁(ひかえかべ)」も設置されていなかったことから建築基準法違反を認めています。

しかし、この法律改正以前に作られたブロック塀は、設置当時は適法だったので、いわゆる「既存不適格(きそんふてきかく)」という状態となり、法的に規制できないのです。

既存不適格は、建築時には適法に建てられた建築物であって、その後、法令の改正や都市計画変更等によって現行法に対して不適格な部分が生じた建築物のことをいう。

建築基準法は原則として着工時の法律に適合することを要求しているため、着工後に法令の改正など、新たな規制ができた際に生じるものである。そのまま使用していてもただちに違法というわけではないが、増築や建替え等を行う際には、法令に適合するよう建築しなければならない(原則)。

当初から法令に違反して建築された違法建築や欠陥住宅とは区別する必要がある。(出典:Wikipedia)


塀の耐用年数はおよそ30年と言われていますが、もっと古いのではないかと思われる明らかに危ない既存不適格のブロック塀は、どんなに地震で倒れやすくても違法建築にはならないのです。これでいいのでしょうか?

今後、地震が頻発する可能性を考えると、設置当時は合法なので違法とならない塀も、立法による撤去を真剣に考えるべき時期に来ているのではないでしょうか?

擁壁の上にあり、2.2mを超え、透かしがあるので、鉄筋が少ないことが予想できる古そうなブロック塀(撮影:あんどうりす)


過去記事に詳しく書きましたが、既存不適格のブロック塀の見分け方は以下です。

透かしのあるブロック塀、石垣の上のブロック塀は、いずれも鉄筋の数が足りなかったり、入れられない構造で倒壊の可能性が高いです。すでに亀裂や傾きがあるブロック塀など、危険なブロック塀です。ブロック塀で土どめするのも危険です。

土留めに使われているブロック塀 (撮影:M.Tさん)

色が黒ずんでいて風化していれば、危険なブロック塀の可能性が高いので、誰でも見分けられます。違法建築ですと地震で倒壊した場合、損害賠償請求された時に敗訴する可能性が高いです。高槻市のブロック塀倒壊は違法であったため、業務上過失致死という刑法上の捜査も始まっています。