2018/06/29
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』
エレベーターから脱出!皆さん、もしかしてアレを思い浮かべませんか?
ずっと救出を待ったけど、連絡も取れない、熱中症の危険もある。そんな時、人は、脱出したくなります。そうすると、多くの人はアレができないかと思っちゃうわけです。そう、アレ!マンガとか、映画のお約束のアレです。
人気アニメの『名探偵コナン』にもアレのシーンがありました。
■『名探偵コナン』事件ファイル第304話「揺れる警視庁 1200万人の人質」(ytv)
http://www.ytv.co.jp/conan/archive/k1169253.html
『スパイダーマン:ホームカミング』でもアレをやってました。
映画『スパイダーマン:ホームカミング』予告①/SonyPicturesJapan(出典:Youtube)
そう、アレとは・・・エレベーターの上を開けて脱出するというシーンです。「上だ!上が開くはず!」と絶対、言い出す方がいそうです。そうすれば脱出できるはず・・・。でも、残念でした。日本のエレベーターは、上部が内側から 開くものはないんです。 外側からだと開けられるかといえば、最新のものは、救出口すらないものもあります。
だから、救助を待つしかないのです。でも、何日も待てない・・・。この時、あるエレベーター保守会社が受け持っているエレベーター数は1人につき最大300件だそうです。1人でこれだけの数が可能になったのは、最近のエレベーターには遠隔監視や点検機能がついた事もあって、現地に向かう点検は3ヶ月に1回で済んでいるためなのです。でも、災害時すべて救出や復旧が必要になったら・・・・1人が担当している数だけみても1日で回れない可能性が高そうですよね・・・
そんな訳で住民同士でエレベーター脱出訓練をしている所も増えています。住民同士で脱出できれば、お互いすぐ助けられますよね!
脱出訓練の動画はこちらです。
エレベーター閉じ込め救出訓練/i-tec24(出典:Youtube)
まずは全体の流れの説明があって、エレベーター機械室を見学して巻上機や地震管制装置を見学。そして電源をオフにするスキルを学びます。

次に、エレベーターホール側から解除鍵を使って、扉を開けます。この時、介助者が作業者のベルト等を後ろからしっかりと握り、万一に備えます。落下の危険がある作業ですから、安全確保、重要ですね!

扉が開いてエレベータのカゴとホールの床の段差があまりない時は、そのまま中の方を救出できます。

段差がある時は、カゴの中に脚立をいれて、カゴ内から昇るようにして救出します。もちろん落下の危険がないか注意しながらですが、ここ、個人的に好きな場面です。楽しそう!

こんな感じでマンション住民で脱出訓練をすると、お互いがお互いを助けるんだという自覚も芽生えて、その他の防災対策も進むかもしれないなと思います。自分たちでできる人が増えれば、作業員も本当に困った人だけに向かえますよね。
エレベーターの脱出訓練をするところが増えていると言ってもまだまだ防災に関心がある人が少数派なので、それほどはいません。去年は150回ほど講演しましたが、お聞きしたらエレベーターの脱出訓練をした方はたった1人でした。今年はやっともう1人いらっしゃいました。
珍しいので、その方たちにはどこで実施したかお聞きしています。1人目は、赤ちゃん連れのママで、職場でやりましたっておっしゃいました。で、どこの職場かお聞きしたら「東京消防庁です!」っておっしゃっていました。そこならやってそう(笑)・・もう1人は医師の方で、病院で実施したことがあるとのことでした。病気の患者さんが閉じ込められたら健康な方より体力が持ちません。しっかり災害対策されている病院だと心強いですよね。
ということで、みなさんの職場や自宅でもエレベーターがあるのであれば、対策を考えてみてはいかがでしょうか?常に想定外を考えるということであれば、自分たちでできることを増やしたほうがよさそうです。 そして、楽しい訓練ならば防災仲間も増えそうです!
(了)
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』の他の記事
おすすめ記事
-
「自分の安全は自分で」企業に寄り添いサポート
海外赴任者・出張者のインシデントに一企業が単独で対応するのは簡単ではありません。昨今、世界中のネットワークを使って一連の対応を援助するアシスタンスサービスのニーズが急上昇しています。ヨーロッパ・アシスタンス・ジャパンの森紀俊社長に、最近のニーズ変化と今後の展開を聞きました。
2025/08/16
-
-
白山のBCPが企業成長を導く
2024年1月1日に発生した能登半島地震で震度7を観測した石川県志賀町にある株式会社白山の石川工場は、深刻な被害を受けながらも、3カ月で完全復旧を実現した。迅速な対応を支えたのは、人を中心に据える「ヒト・セントリック経営」と、現場に委ねられた判断力、そして、地元建設会社との信頼関係の積み重ねだった。同社は現在、埼玉に新たな工場を建設するなどBCPと経営効率化のさらなる一体化に取り組みはじめている。
2025/08/11
-
三協立山が挑む 競争力を固守するためのBCP
2024年元日に発生した能登半島地震で被災した三協立山株式会社。同社は富山県内に多数の生産拠点を集中させる一方、販売網は全国に広がっており、製品の供給遅れは取引先との信頼関係に影響しかねない構造にあった。震災の経験を通じて、同社では、復旧のスピードと、技術者の必要性を認識。現在、被災時の目標復旧時間の目安を1カ月と設定するとともに、取引先が被災しても、即座に必要な技術者を派遣できる体制づくりを進めている。
2025/08/11
-
アイシン軽金属が能登半島地震で得た教訓と、グループ全体への実装プロセス
2024年1月1日に発生した能登半島地震で、震度5強の揺れに見舞われた自動車用アルミ部品メーカー・アイシン軽金属(富山県射水市)。同社は、大手自動車部品メーカーである「アイシングループ」の一員として、これまでグループ全体で培ってきた震災経験と教訓を災害対策に生かし、防災・事業継続の両面で体制強化を進めてきた。能登半島地震の被災を経て、現在、同社はどのような新たな取り組みを展開しているのか――。
2025/08/11
-
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/08/05
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/08/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方