2018/07/13
事例から学ぶ

ハザードマップを毎年改定
東京・日本橋を中心に多くのオフィスビルを所有・管理する三井不動産。テナントへの事業継続サポートも含め、災害対策に注力している。主にオフィスビルにおける水害対策を取材した。
三井不動産は浸水については当初はゲリラ豪雨を主に想定。しかし2011年の東日本大震災をきっかけに、「津波のほか、河川氾濫など幅広く被害を考える必要があると考えた」と同社ビルディング本部運営企画部資産管理グループ統括の清水美貴氏は語る。
5年間で防災対策やテナントも含めたBCP(事業継続計画)サポートを強化。約200億円をかけて耐震診断や非常用電源の長時間化などを推進、浸水対策も同時に進めた。オーナーから借り上げているマスターリース物件に対しても推進している。2012年以降の新築物件はこの仕様を取り入れている。

当然のことながら優先されるものは人命。浸水対策としてはハザードマップを毎年改定している。津波、内水、外水、液状化のリスクと自社物件を地図上に落とし込み、危険度を計っている。3月に東京都が高潮の浸水予想図を発表したことから、今年前述の4つに加えて高潮のリスクも追加した。ハザードマップは新築物件の開発にも活用。かさ上げ工事を行う場合もある。
三井不動産では帰宅困難者対策としてテナントに1日分の食料・水を無償配布。さらに近年は東京都心で再開発の際に帰宅困難者受け入れスペースや備蓄倉庫の設置が容積率割増の条件となっており、災害時に滞在できる空間の確保に努めている。電気関連など設備に関しては3月に開業した「東京ミッドタウン日比谷」(東京都千代田区)のような最新のビルは地上階に重要設備を置いているが、既存で地下などに置いている物件は多くは移設が困難。そのため止水板をハザードマップに基づいた安全確保に必要な高さのものを設置している。
事例から学ぶの他の記事
おすすめ記事
-
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/05/05
-
企業理念やビジョンと一致させ、意欲を高める人を成長させる教育「70:20:10の法則」
新入社員研修をはじめ、企業内で実施されている教育や研修は全社員向けや担当者向けなど多岐にわたる。企業内の人材育成の支援や階層別研修などを行う三菱UFJリサーチ&コンサルティングの有馬祥子氏が指摘するのは企業理念やビジョンと一致させる重要性だ。マネジメント能力の獲得や具体的なスキル習得、新たな社会ニーズ変化への適応がメインの社内教育で、その必要性はなかなかイメージできない。なぜ、教育や研修において企業理念やビジョンが重要なのか、有馬氏に聞いた。
2025/05/02
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方