2015/07/10
C+Bousai vol3
史上最悪の洪水に備える
地区内に安全な場所はない
一方で、まだまだ課題もある。地区内に、完全に安全と言える施設は今のところ存在しない。災害対策本部が設置される長野市長沼支所に至っては、千曲川の堤防からわずか数十mの場所に位置し、最も被災しやすい場所といっても過言ではない。かといって代替施設を置く場所が近くに存在するわけでもない。計画上では、「支所が退去せざるを得ない場合は市に代替場所を要請する」としたが、市としてもあらかじめ候補地が提供できない状況にある。
避難情報の伝達方法にも不安が残る。市では防災無線を使って避難情報を出すが、地区特有の情報をどのように出すのかは今後も議論が必要だ。全住民には防災ラジオを配布しているが、これらが有効に機能するかの検証もしなくてはならない。
防災に満点は存在しない。まずは合格点を満たすために同地区では、今後も計画を繰り返し見直していくことにしている。そして、計画通りに、あるいは計画に基づきながら柔軟に意思決定できるように、今後は訓練のあり方も検討していく予定だ。
長野市では、今後、長沼地区をモデルに、各地区に地区防災計画の策定を提案していくことにしている。都市と山間部という多様な側面を持つ自治体が、各地区に特性に応じてどのように防災体制を整えていくのか、今後も注目される。
取材:地区防災計画アドバイザー 中澤幸介
C+Bousai vol3の他の記事
- 県境を越えて防災と地域活性化
- 巻頭インタビュー| 地区防災計画がつくる新たな共助社会 話し合う「場」を育てる
- 防災活動でマンションの価値向上 (よこすか海辺ニュータウン「ソフィアステイシア」)
- 原発被害を乗り越え未来に繋ぐ (福島県桑折町半田地区)
- 史上最悪の洪水に備える 避難基準を独自に設定 (長野市長沼地区)
おすすめ記事
-
月刊BCPリーダーズ2025年上半期事例集【永久保存版】
リスク対策.comは「月刊BCPリーダーズダイジェスト2025年上半期事例集」を発行しました。防災・BCP、リスクマネジメントに取り組む12社の事例を紹介しています。危機管理の実践イメージをつかむため、また昨今のリスク対策の動向をつかむための情報源としてお役立てください。
2025/10/24
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/10/21
-
「防災といえば応用地質」。リスクを可視化し災害に強い社会に貢献
地盤調査最大手の応用地質は、創業以来のミッションに位置付けてきた自然災害の軽減に向けてビジネス領域を拡大。保有するデータと専門知見にデジタル技術を組み合わせ、災害リスクを可視化して防災・BCPのあらゆる領域・フェーズをサポートします。天野洋文社長に今後の事業戦略を聞きました。
2025/10/20
-
-
-
走行データの活用で社用車をより安全に効率よく
スマートドライブは、自動車のセンサーやカメラのデータを収集・分析するオープンなプラットフォームを提供。移動の効率と安全の向上に資するサービスとして導入実績を伸ばしています。目指すのは移動の「負」がなくなる社会。代表取締役の北川烈氏に、事業概要と今後の展開を聞きました。
2025/10/14
-
-
-






※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方