2023/01/12
事例から学ぶ

堀場製作所は1993年に品質マネジメントシステムの国際規格ISO9001の認証を取得、2004年には品質・環境・労働安全のマネジメントシステムを一体的に運用する統合マネジメントシステムIMSの認証を取得し、2011年には国内のHORIBAグループ一体で運用するまで発展させてきた。成果はリスクマネジメント活動にも表れている。
堀場製作所
京都市
※本記事は月刊BCPリーダーズvol.33(2022年12月号)に掲載したものです。
❶海外顧客からの要望でいち早く品質マネジメントシステムを構築
・1990年代、欧州ではISO9001の認証がないと製品を購入できないと言われ、マネジメントシステムを構築。単純に担当部署を設置して取り組むのではなく、総務的な文章の管理から企画開発、製品設計、生産、サービス提供まで全社一丸となって取り組んだ。
❷非効率性を是正するために統合MSを推進
・品質、環境、労働と、それぞれのMSの認証取得に取り組んできたが、共通部分を反復する非効率性に直面。これらを改善するために統合MSに取り組んだ。より効率的な組織運営を目指し、2003年には担当部署の「品質・環境・安全統括センター」を立ち上げ運用を開始した。
❸有事対応のため事業継続マネジメントシステムも統合
・2014年に事業継続マネジメントシステムISO22301を追加。有事対応という面で、他の規格で共通化できた範囲は少なかったが、一本化したマニュアルを基本にIMSで対応できる仕組みに整えた。
1965年に日本で初めてエンジン排ガス測定装置(MEXA)を発売して以降、自動車製造に関わる数々の分析・計測装置を開発してきた堀場製作所。現在では自動車に加え、半導体の製造、環境の測定、医療や科学の分析に不可欠な機器の開発・製造で世界をリードしている。2021年は売上高、営業利益、経常利益で過去最高を記録し、営業利益率はコロナ禍前の2019年を大きく上回った。
堀場製作所はマネジメントシステムを活用しながら発展してきた企業だ。1993年に初めて品質マネジメントシステムの国際規格であるISO9001の認証を取得。2004年には品質・環境・労働安全のマネジメントシステムを一体的に運用する統合マネジメントシステム(IMS:Integrated ManagementSystem)の認証を日本の分析・計測装置専門メーカーで初取得。2011年には国内のHORIBAグループ一体でIMSを運用するまでに発展させてきた。統合マネジメントシステムにより、リスクマネジメント活動にも成果が表れている。
きっかけは海外メーカーの要請
同社が初めてのマネジメントシステム、品質マネジメントシステムの認証を1993年に取得するきっかけは、海外大手自動車メーカーからの要望だった。
「1990 年代に入ると、欧州ではISO9001 の認証がないと製品を購入できないと言われました。製品の品質には自信がありましたが、認証がないとお客様が安心して購入できない時代になりつつありました。単純に担当部署を設置して取り組むのではなく、総務的な文章の管理から企画開発、製品設計、生産、サービス提供まで全社一丸となって取り組みました」と同社開発本部ジュニアコーポレートオフィサーの佐竹司氏は振り返る。
ISO9001の認証取得により、各部門や社員個人に継承されてきた経験をもとに管理していた体制から、規格化により分類した文章記録にもとづいた管理に変化。規格化による実務的な効果を実感し、さらなる導入を進めた。とはいえ、認証を取得する前年には、審査に通ることができなかった。
「マネジメントが個別部門的に最適化されていた。また、実績の積み上げが足りなかったことなどが理由でした」と佐竹氏は話す。
続いて1997年には環境マネジメントシステムのISO14001を取得した。当時の同社では環境に関連する分析・計測機器が売上げの約6割を占めるほど。環境への配慮としてISO14001は社会的な必然だった。
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