様子見を決め込む企業が直面しているリスク
第36回:経済安全保障に向き合う時代変化(2)
多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
2023/03/28
再考・日本の危機管理-いま何が課題か
多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
経済の相互依存が高まれば平和になるというのは「明らかな幻想」であったとの発信が経済産業大臣からなされた。このことで、企業が大きな経営判断を迫られる状況になっていることを前稿で語った。また、今まで企業が経済安全保障問題へ向き合う姿勢は客観的に3通りに分かれていたのではないかということも前稿で示したが、おさらいの意味で繰り返す。
一つは、あくまで「違法性の有無」を最優先の判断基準とし、逆説的に「違法性がない」のであればOKとする考え方だ。つまりさまざまな道義的な問題が指摘され、たとえそれが表面上の経営指針と反しているとしても、違法性がなければ経済性を優先する判断がなされるということだ。
違法性がないのだから、法的責任は追及できない。道義的批判がビジネスの成立を危ぶむほどの状況に発展しない限り、事実上何ら影響を及ぼすことはない。だが、筆者としてはこの考え方には与しないとも述べた。
二つは、経済性よりも上位の概念として経済安全保障問題やサステナブルなどの課題に真剣に向き合い、自ら率先垂範の活動を行う企業である。
このような企業には、経済性の優先順位を下げたとはいえ、結果として中長期的に事業拡大が実現できると期待したいし、このような企業の姿勢からは多くを学びたいと真剣に思う。ここで筆者が懸念し、提言する事項などすでに凌駕している存在なのだからだ。
三つは、様子見を決め込む企業だろう。「違法性はない」としても、「道義的な責任」は現実に考えており、表向きの経営指針として表明しながらも、現実問題としてはどこまで厳しく向き合うか判断を先送りし、そのために目の前の経済性を失うことを容認できない思いも強く、結局臭いモノに蓋をして様子見をする。
これは事実上見て見ぬ振りであり、いざ問題が露呈した際の企業の言い訳は、上位概念は通達していながら浸透できずに現場で実行しきれなかったという、トカゲのしっぽ切りのような結果が想像できる。
個々の事情による相違点はあっても、多くの企業がこのような状況にあるのではないだろうか。だからこそ、大きな分岐点に差し掛かっているのである。
この事態を動かすためにも、もう一度、西村経産大臣の行ったスピーチの内容を検証する必要がある。ここに示される「明らかな幻想」であった結果、どのような問題が発生し、課題となっているのか。
再考・日本の危機管理-いま何が課題かの他の記事
おすすめ記事
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月23日配信アーカイブ】
【4月23日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:南海トラフ地震臨時情報を想定した訓練手法
2024/04/23
2023年防災・BCP・リスクマネジメント事例集【永久保存版】
リスク対策.comは、PDF媒体「月刊BCPリーダーズ」2023年1月号~12月号に掲載した企業事例記事を抜粋し、テーマ別にまとめました。合計16社の取り組みを読むことができます。さまざまな業種・規模の企業事例は、防災・BCP、リスクマネジメントの実践イメージをつかむうえで有効。自社の学びや振り返り、改善にお役立てください。
2024/04/22
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方