経済安全保障の緊迫度を見誤っている可能性(写真:写真AC)

経済安全保障に向き合うべきは企業当事者

前回、グローバル環境の変化に注目すべきとしたが、その後も数々の動きがあった。何といっても岸田総理のウクライナ電撃訪問である。意図した結果かどうかは別にして、中露首脳会談が行われる、まさにそのタイミングに行われたのである。

歴史上、時の大臣クラスの戦地訪問がドタキャンされたことが複数回あったと聞いたことがあるが、そのことを考慮に入れると、ドタキャンして計画自体なかったことにしても不思議ではなかった。つまり、たとえ偶然であったとしても、少なくとも中止という判断に至らなかった事実は大きい。

日本国内では、ウクライナに贈呈した『必勝しゃもじ』を揶揄して矮小化するいわれ方もあったが、日本が国家として取るべき方向性を結果として強烈に示したことは、国際社会で大きなインパクトがあったはずだ。それがたとえ外圧による行動であったとしても、だ。

グローバル環境では、フィンランドのNATO加盟が、唯一反対していたトルコの議会申請が承認され確定した。そして経済的にはイギリスのTPP加盟が大筋決まり、一方でホンジュラスは親中姿勢を打ち出し台湾との断交を発表した。

グローバル環境に大きな動き(写真:写真AC)

このように世界では、米中対立が進展した新冷戦といってもよい環境が整い、その前提でのブロック経済体制がさらに加速している。その先頭を行っているのが半導体関連のブロック経済化であることはニュース報道でも取り上げられている。

そして林外相が中国から帰国した直後に、強制労働企業を公共事業などから排除する閣議決定が行われた。外交上の対立と経済は別だという時代は終焉を迎えようとしている現実を直視しなければならないだろう。

米中対立が進展した環境下でブロック経済体制が加速(写真:写真AC)

もちろん、その状況下で、自由主義国家勢ではなく専制主義国家勢側でのビジネスを優先する選択をする企業があってもよいだろう。それはそれで一つの選択である。が、自由主義国家勢からの規制を受け、反勢力との扱いを甘んじて享受するならば、という前提付きであるのはいうまでもない。その結果がビジネス上の最善の選択とは、筆者には思えないだけである。