日常のトラブルが裁判に発展するのは、そう多くないとはいえあり得ること(イメージ:写真AC)

はじめに

いざ裁判に直面したらどうする(イメージ:写真AC)

日常において大なり小なりトラブルが発生することはよくあることだと思いますが、それが民事・刑事の裁判に発展することはそう多くないといえます。しかしながら、訴えたり、訴えられたりするなどして、裁判の対応をせざるを得ない事態に直面するのはあり得ることです。そこで、いざ裁判に直面したときにも落ち着いて対応ができるよう、裁判手続きの流れと概要についてご説明したいと思います。

裁判のうち民事訴訟は、通常訴訟、手形・小切手金の支払を求める手形小切手訴訟、簡易な手続きで60万円以下の金銭の支払を求める少額訴訟、その他(家族関係についての人事訴訟や行政に関する行政訴訟)という4つに大別されます。今回は、通常訴訟の第一審を取り上げます。

民事通常訴訟の流れ

民事通常訴訟の第一審における大きな流れは、①訴訟の提起→②訴状の審査→③口頭弁論期日の指定・呼出し→④訴状の送達→⑤答弁書の提出→⑥口頭弁論期日・弁論準備期日等の開催→⑦和解の成立・判決の言渡し等による終結、というものになります。

①訴訟の提起

貸し付けた金銭が返金されない、取締役が会社に与えた損害を賠償しないといったトラブルが生じ、裁判所における解決を望んだ場合には、訴えを提起する必要があります。

「訴えの提起は、訴状を裁判所に提出してしなければならない」(民事訴訟法(以下、法名省略)134条1項)とされていますので、訴状と呼ばれるものを作成し、管轄のある裁判所に提出しなければなりません(例外として、簡易裁判所における訴えの提起は口頭でも可能です(271条))。

訴えの提起は「訴状」の作成・提出をもって行われる(イメージ:写真AC)

訴状の記載事項については「当事者及び法定代理人」「請求の趣旨及び原因」と定められています(134条2項。必要的記載事項)。当事者として、訴える者を原告、その相手方を被告といいます。また、訴状の附属書類として、訴状の副本、当事者が法人である場合には資格証明書(代表者事項証明書等)などの提出も必要です。

さらに、所定の手数料(訴額等によって異なります。)を納付しなければならず、収入印紙を購入し、訴状に貼付するという方法によって手数料を支払うのが一般的です。

②訴状の審査

訴状が提出されると、事件の配点を受けた裁判長は、訴状を審査することになります。訴状に必要的記載事項が適法に記載されていない場合には「相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない」(137条1項。補正命令)とされ、「原告が不備を補正しないとき」には、訴状が却下されることになります(同条2項)。所定の手数料が納付されない場合においても、同様のことが定められています(137条の2)。

このため、訴状の提出後に、裁判所書記官から補正や手数料についての連絡があった場合には、適切に対応する必要があります。

③口頭弁論期日の指定・呼出し

「訴えの提起があったときは、裁判長は、口頭弁論の期日を指定し、当事者を呼び出さなければならない」(139条)とされています。被告に対する呼出は、期日呼出状が訴状と合わせて送達されることによりなされることが通常です。