裁判手続の基礎知識―流れと概要―【労働審判編】
労働審判手続の流れ・特徴・概要等
山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。2006年慶應義塾大学文学部人文社会学科人間関係学系社会学専攻卒業、09年同大学大学院法務研究科法学未修者コース修了、10年弁護士登録、21年公認不正検査士(CFE)認定。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
2023/09/13
弁護士による法制度解説
山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。2006年慶應義塾大学文学部人文社会学科人間関係学系社会学専攻卒業、09年同大学大学院法務研究科法学未修者コース修了、10年弁護士登録、21年公認不正検査士(CFE)認定。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
前回、民事通常訴訟の第一審における手続の流れと概要についてご説明しました。民事通常訴訟への対応も専門性が要求され得るものではありますが、さらに高度な専門性が必要となると考えられているのが労働審判という制度です。
労働に関する紛争については、民事訴訟を提起してその解決を求めることもできますが、ケースによっては労働審判の申立てをしてその解決を求めることも可能です。
労働審判とは、裁判手続の種類として、「訴訟」ではなく、「非訟」に分類されるものです。非訟については、一般に、裁判所が後見的な立場から、合理的な裁量に基づき、権利義務の具体的内容の形成を目的とするものであるなどといわれています。このことは、労働審判法(以下、法名省略)において、「紛争の実情に即した迅速、適正かつ実効的な解決を図ることを目的とする」(1条)とされていることにも表れているといえます。
今回は、労働者側でも、使用者側(事業主側)でも、労働紛争の解決の際に利用される可能性がある労働審判について取り上げてご説明したいと思います。
労働に関する紛争であれば何でも労働審判手続を利用することができるわけではありません。「労働契約の存否その他の労働関係に関する事項について個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争たる」「個別労働関係民事紛争」(1条)が、労働審判手続の対象となります(5条1項)。例えば、解雇の効力が争われているもの(いわゆる不当解雇事案)や、未払賃金の支払を求めるものなどが典型的です。
また、労働審判事件の管轄は地方裁判所ですが(2条1項)、裁判官のみが労働審判手続を行うのではなく、労働審判官1名と労働審判員2名の計3名から成る労働審判委員会が構成され、同委員会により手続が行われます(7条)。
労働審判官は「裁判官の中から指定」され(8条)、労働審判員は「労働関係に関する専門的な知識経験を有する者のうちから任命」されます(9条2項)。この労働審判員については、実務上、労働者側・使用者側(事業主側)のそれぞれから選ばれますが、「中立かつ公正な立場において」職務を行うものとされています(9条1項)。
おすすめ記事
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/10/05
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/10/01
ERMにおける実行性の強化
企業は、リスクに対する組織の適切な行動を管理するためにオペレーショナルリスクとコンダクトリスクといったリスクカテゴリーを設定し管理を実施していることが多い。オペレーショナルリスク管理は、過去の操業上の失敗事例を分析して同種の事例の再発を予防するための管理である。換言すれば、過去・現在の状況を踏まえ、それを将来に延長して対応するフォワードルッキングなアプローチの一種といえる。他方、コンダクトリスク管理は、将来の環境が必ずしも過去と同様ではないことも踏まえ、組織行動の特徴を理解した上で、組織行動を律する根底の部分(組織文化と表現することもある)を意識して、不測の事態を招かないための制御を行う活動といえる。
2024/09/25
海外工場の労働環境を把握 課題を明らかに
「ミキハウス」のブランドでベビー服や子供服、靴、玩具などの販売を世界中に展開する三起商行が、委託先のミャンマー工場の人権侵害を指摘されたのは2016年11月だった。同社は第三者機関を設立して調査。結果をもとに工場に改善を依頼し、実行された。その後、各種方針や規範を策定し、2019年には人権デュー・デリジェンスの取り組みを開始。責任あるサプライチェーンの構築に力を注いでいる。
2024/09/25
Q&Aで解説 実務課題の超ヒント
「危機時の広報はどう連携する?」「DXで危機管理担当者の不足は解消する?」など、企業の危機管理担当者はさまざまな疑問を抱えながら業務にあたっています。本紙はこの半年間で聞いた読者の声を「Q(Question)」として集約、危機管理に詳しいコンサルタントに提示して「A(Answer)」をもらいました。実務課題の超ヒント、リスク管理・危機管理編の後編です。
2024/09/24
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方