生体認証をよいものにするために必要な認識
第50回:セキュリティの勘違い(2)
多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
2023/10/31
再考・日本の危機管理-いま何が課題か
多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
前回、生体認証が必ずしもセキュリティ性を向上させるわけではなく、むしろセキュリティ低下を招く場合もあることを述べた。では、生体認証は何のために開発され、どのように利活用するべきなのだろうか。
最初に断っておくが、生体認証技術は極めて重要な技術であり、使い方を誤らなければセキュリティ性を向上させ、安全を目指せるものである。重要なのは、生体認証とは本人識別技術であり、認証手段としての利活用は限定的であるという認識に立つことだろう。
本人識別手法としての生体認証は、古くから犯罪予防、犯罪捜査に使われてきた。それは現場に残った指紋と本人の指紋との照合や、血痕からの血液型照合、監視カメラによる映像での本人識別、DNA鑑定のように犯行と犯人を結び付ける証拠として機能させてきた。
ただし、識別制度は高まってはいるが100%間違いないという結果ではなく、何%適合して確からしいというに過ぎず、自供も含めたその他の証拠と総合的に裁判で判断されるべき一つの要素なのである。
そしてあまり知られていないかもしれないが、最も技術発展に寄与したと思われる分野は、犯罪予防、特にテロ対策だと思っている。
テロの予防は、いうまでもなく、犯行を事前に察知し抑えることである。その手段は、情報を収集すること、テロリストやブラックリストの人物の入国を阻止することなど、行動をトレースすることであろう。私の知る限り、空港での監視カメラ映像による本人特定は古くから利活用されていて、顔認証技術はその分野で進歩してきたと考えている。
空港警備においてテロリストが入国してきた場合、その人物がテロリスト本人であることを100パーセント特定することは困難である。偽造パスポートや偽名を使ったなりすましが想定されるからだ。
しかし、その状況で100パーセントでなくとも、例えば60パーセント本人らしいというだけでも、その人物の本人確認を厳しくチェックすることでリスクは減少させられる。他人の空似等の場合もあり得るだろうが、すべての人間に厳重チェックをするのは現実的ではなく、特定の対象に絞られることでチェックも有効になり、安全第一の観点を考えれば重要なのだ。
再考・日本の危機管理-いま何が課題かの他の記事
おすすめ記事
競争と協業が同居するサプライチェーンリスクの適切な分配が全体の成長につながる
予期せぬ事態に備えた、サプライチェーン全体のリスクマネジメントが不可欠となっている。深刻な被害を与えるのは、地震や水害のような自然災害に限ったことではない。パンデミックやサイバー攻撃、そして国際政治の緊張もまた、物流の停滞や原材料不足を引き起こし、サプライチェーンに大きく影響する。名古屋市立大学教授の下野由貴氏によれば、協業によるサプライチェーン全体でのリスク分散が、各企業の成長につながるという。サプライチェーンにおけるリスクマネジメントはどうあるべきかを下野氏に聞いた。
2025/12/04
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/12/02
目指すゴールは防災デフォルトの社会
人口減少や少子高齢化で自治体の防災力が減衰、これを補うノウハウや技術に注目が集まっています。が、ソリューションこそ豊富になるも、実装は遅々として進みません。この課題に向き合うべく、NTT 東日本は今年4月、新たに「防災研究所」を設置しました。目指すゴールは防災を標準化した社会です。
2025/11/21
サプライチェーン強化による代替戦略への挑戦
包装機材や関連システム機器、プラントなどの製造・販売を手掛けるPACRAFT 株式会社(本社:東京、主要工場:山口県岩国市)は、代替生産などの手法により、災害などの有事の際にも主要事業を継続できる体制を構築している。同社が開発・製造するほとんどの製品はオーダーメイド。同一製品を大量生産する工場とは違い、職人が部品を一から組み立てるという同社事業の特徴を生かし、工場が被災した際には、協力会社に生産を一部移すほか、必要な従業員を代替生産拠点に移して、製造を続けられる体制を構築している。
2025/11/20
企業存続のための経済安全保障
世界情勢の変動や地政学リスクの上昇を受け、企業の経済安全保障への関心が急速に高まっている。グローバルな環境での競争優位性を確保するため、重要技術やサプライチェーンの管理が企業存続の鍵となる。各社でリスクマネジメント強化や体制整備が進むが、取り組みは緒に就いたばかり。日本企業はどのように経済安全保障にアプローチすればいいのか。日本企業で初めて、三菱電機に設置された専門部署である経済安全保障統括室の室長を経験し、現在は、電通総研経済安全保障研究センターで副センター長を務める伊藤隆氏に聞いた。
2025/11/17
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方