2013/06/21
防災・危機管理ニュース
3.行政による河川管理の限界
河川整備は、治水による安全確保と災害軽減を図ることを目的として実施されてきた。治水施設の整備の進捗は、時間雨量50mm相当の降雨に関し、想定氾濫区域における安全確保がなされた区域の比率である氾濫防御率により表される。内閣府の集計によれば、1970年に約24%であった氾濫防御率は、1995年には50%を超え、2009年には61.5%まで上昇した。また、雨水の排水機能を有する下水道等の人口普及率は、1970年には16%、1995年には54%、2010年には86.9%まで高まった。
一方、気候変動に適合した治水対策検討小委員会の答申では、100年後の降水量の変化による洪水・氾濫の頻度への影響を、治水計画における河川の安全度合いの指標である治水安全度がどの程度低下するかという観点により試算している。試算によれば、現時点で目標としている治水安全度は、200年に一回程度の場合には90~145年に一回程度に、150年に一回程度の場合には22~100年に一回程度、100年に一回程度の場合は25~90年に一回程度となる。将来の降水量の増加により、現在の計画での治水安全度は著しく低下し、洪水・氾濫の頻度が上昇することが予想される。図5に、治水安全度の低下が大きい北海道と東北の試算結果を示す。
これまでの河川管理は、ダム建設や護岸工事等の行政主体のものであったが、100年後の治水安全度の低下を補うような投資は困難である。従って、国土交通省では、災害発生を完全に防御するのではなく、「犠牲者ゼロ」に向けた対策の推進や、国家機能の麻痺を回避する対応策により、被害の最小化を目指すことを基本的方向としている。今後は、土地利用の規制・見直し、災害に強い地域への転換、災害発生時の初動対応の充実強化、既存設備の信頼性の向上や有効活用など、地域の特性に応じた施策が実施される。このような施策が有効に機能するためには、行政と地域社会・国民の連携が重要であり、企業においても、自らの水害への対応力を高める「自助」のみならず、地域社会と一体となって推進する「共助」が求められる。
4.水害に対する事前対策と発災時の対応
今後、行政による河川管理には限界があることから、企業としては先ずは「自助」が求められる。そこで、以下に水害に対して有効となる対策を示す。
(1)水害に対する事前対策
水害への事前対策は、自社の洪水危険度を洪水ハザードマップで確認し、事業所における浸水に脆弱な場所をピックアップし、社内で危険箇所を共有化するとともに、ハード面での対応を行う。
http://www.mlit.go.jp/river/bousai/main/saigai/kisotishiki/zu-03.html
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
-
民間企業の強みを発揮し3日でアプリ開発
1月7日、SAPジャパンに能登半島地震の災害支援の依頼が届いた。石川県庁が避難所の状況を把握するため、最前線で活動していた自衛隊やDMAT(災害派遣医療チーム)の持つ避難所データを統合する依頼だった。状況が切迫するなか、同社は3日でアプリケーションを開発した。
2024/04/11
-
-
組織ごとにバラバラなフォーマットを統一
1月3日、サイボウズの災害支援チームリーダーである柴田哲史氏のもとに、内閣府特命担当の自見英子大臣から連絡が入った。能登半島地震で被害を受けた石川県庁へのIT支援要請だった。同社は自衛隊が集めた孤立集落や避難所の情報を集約・整理し、効率的な物資輸送をサポートするシステムを提供。避難者を支援する介護支援者の管理にも力を貸した。
2024/04/10
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月9日配信アーカイブ】
【4月9日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:安全配慮義務
2024/04/09
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方