2013/09/19
防災・危機管理ニュース
2.竜巻などの激しい突風を伴う気象現象の概要
(1)突風現象の種類
竜巻などの激しい突風に関して気象庁が発表する気象情報は、積乱雲に伴って発生して災害をもたらす激しい突風を対象としている。具体的には、「竜巻」や「ダウンバースト」、「ガストフロント」による突風である。後述する竜巻注意情報や竜巻発生確度ナウキャストの対象となる突風の強さは、藤田スケールでおおむねF0以上である。
①竜巻とは
積雲や積乱雲に伴って発生する鉛直軸を持つ激しい大気中の渦巻きで、漏斗状または柱状の雲を伴うことがある。地上では、収束性で回転性の突風や気圧降下が観測される。多くの場合、直径は数十~数百mで、数kmに亘ってほぼ直線的に移動するために、被害域は帯状・線上となることが多い。
②ダウンバーストとは
積雲や積乱雲から吹き降ろす下降気流で、地表に衝突し周囲に吹き出す突風である。地上では、発散性の突風やしばしば強雨・雹(ひょう)を伴うことがある。被害域は円あるいは楕円状となることが多い。吹き出しの広がりは直径数百mから10km程度である。周囲への吹き出しが4km未満のものをマイクロバースト、4km以上のものをマクロバーストと呼ぶ。
③ガストフロントとは
積雲や積乱雲から吹き出した冷気の先端と周囲の空気との境界で、しばしば突風を伴う。流れ出る空気の先端は冷気と周囲の暖かい空気との境界であり、突風を伴うことからガストフロント(突風前線)と呼ばれている。降水域から前線状に広がることが多く、数10kmあるいはそれ以上離れた地点まで進行する場合がある。地上では、突風と風向の急変、気温の急下降と気圧の急上昇が観測される。
④塵旋風とは
晴れた日の昼間に地上付近で発生する鉛直軸を持つ強い渦巻きで、突風により巻き上げられた砂塵を伴う。竜巻と違い積雲や積乱雲に伴わず、地上付近の熱せられた空気の上昇によって発生する。
⑤漏斗雲とは
竜巻と同様の現象だが、渦は地上または海上に達しておらず、地表付近で突風は生じない。
(2)藤田スケール(Fスケール)とは
1971年にシカゴ大学の藤田哲也博士により考案された、竜巻やダウンバーストなどの突風により発生した被害の状況から風速を大まかに推定する風速のスケールである。被害が大きいほどFの値が大きく、風速が大きかったことを示す。気象庁によれば、日本ではこれまでF4以上の竜巻は観測されていない。
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方