2014/05/29
防災・危機管理ニュース
図3:テロを実行した組織トップ10
組織名 |
事件数 |
犠牲者数 |
犠牲者数/1回の攻撃 |
Taliban |
641 |
2340 |
3.65 |
Al-Qa’ida in Iraq/Islamic State of Iraq and the Levant |
401 |
1725 |
4.30 |
Boko Haram |
213 |
1589 |
7.46 |
Maoists (India)/Communist Party of India – Maoist |
203 |
190 |
0.94 |
Al-Shabaab |
195 |
512 |
2.63 |
Tehrik-i-Taliban Pakistan (TTP) |
134 |
589 |
4.40 |
New People's Army (NPA) |
118 |
88 |
0.75 |
Al-Qa’ida in the Arabian Peninsula (AQAP) |
84 |
177 |
2.11 |
Revolutionary Armed Forces of Colombia (FARC) |
77 |
45 |
0.58 |
Bangsamoro Islamic Freedom Movement (BIFM) |
34 |
23 |
0.68 |
・アイマンザワヒリがトップを務め、パキスタンFATAに生き残るアルカイダコアは組織的に弱体化し、数多くのテロ事件を実行できる能力はない。一方、自らアルカイダを名乗るイスラム過激派や目的が一致したときにアルカイダと一定の協力関係を構築するイスラム過激派などは、2012年同様に活発的に行動している。
・最も多くのテロ事件に関与したのはアフガニスタンのタリバンで、全体の20%を占める。一方、1回のテロ事件における犠牲者数というテロの暴力性で比較すれば、ISILやボコハラム、TTPによるそれが高く、特にナイジェリアのボコハラムによるテロの暴力性は非常に高い。
・またテロ事件における暴力性では、イスラム過激派によるそれが高く、インドやフィリピン、コロンビアで活動する非イスラム過激派グループによるそれは低くなっている。
・この表ではフィリピンで活動するNPAとBIFMが入っているが、近年フィリピンにおけるテロは活発化する模様を見せている。しかしテロの暴力性という観点ではそれほど高くない。
図4:テロ実行における手段・方法
![](https://risk.ismcdn.jp/mwimgs/1/9/670m/img_19b0d3457b8f1ac20c1641ea3c05f87c88959.png)
・爆弾を使った、特に自爆テロや車爆弾テロ、IED(即席爆破装置)を用いたテロ事件などが特徴的である。アルカイダ系のイスラム過激派によるテロにおいて自爆テロは主要な手段となっている。またタリバンにおいては、治安当局側のメンバーをリクルートしたり、警察のユニフォームを着たりしてテロを実行する、いわゆるインサイダーテロリズムも多い。
・2013年に自爆テロは世界各地で510件発生し、3800人以上が犠牲となっている。人を犠牲にするという暴力性の観点から、自爆テロはそうでないテロの約5倍のパーセンテージで人を死亡に至らせる。
・爆発物を用いたテロは全体の57%を占めるが、2012年は62 %であった。爆発物を用いたテロはシリアやイラク、ロシアカフカス、アフガン、パキスタン、ケニアなどで多い。テロ組織は組織的に弱体化した場合に、身代金目的の誘拐や人質事件など一般犯罪的な行動をとる場合がある。
・爆発物を用いたテロ以外にも、治安当局への襲撃や大物政治家を狙った暗殺事件なども依然として発生している。2012年との比較で、武装した襲撃事件は減少したが、暗殺や誘拐・人質事件は増加している。
図5:テロ事件における標的
Target Type |
Number of Targets |
Private Citizens & Property |
3035 |
Police |
2388 |
Government (General) |
1376 |
Business |
862 |
Military |
621 |
Religious Figures & Institutions |
383 |
Educational Institutions |
354 |
Terrorists & Non-State Militia |
270 |
Transportation |
253 |
Utilities |
244 |
Journalists & Media |
167 |
Violent Political Party |
137 |
Government (Diplomatic) |
102 |
Telecommunication |
68 |
NGO |
51 |
Other |
41 |
Airports & Airlines |
29 |
Tourists |
16 |
Maritime |
11 |
Food or Water Supply |
7 |
Total |
10415 |
・2013年においては、一般市民や警察が標的となった事件では全体の52.1%を占める。例えばイラクではシーア派を中心とした一般市民が標的となる事例が特徴的で、警察や軍などの治安当局が標的となる事例はアフガニスタンで特に顕著にみられる。
・全体的にやはり、警察や軍、政府関係施設など国内権益を狙った攻撃が多い。
・宗教施設への攻撃は2013年に世界32カ国で発生したが、1回の攻撃における平均犠牲者数は3.1人と非常に暴力性が高い。また2012年と比較して21%増加している。これにはイスラム過激派によるキリスト教系施設への襲撃の増加が背景にあるとみられる。
・またジャーナリスト、メディアへの攻撃も増加している。2013年には世界36カ国で発生している。
・駅や空港、大型施設など多くの人が集まる場所は依然としてテロの標的となりやすい。
- keyword
- 海外リスク
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
-
3線モデルで浸透するリスクマネジメントコンプライアンス・ハンドブックで従業員意識も高まる【徹底解説】パーソルグループのERM
「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンとして掲げ、総合人材サービス事業を展開するパーソルグループでは、2020年のグループ経営体制の刷新を契機にリスクマネジメント活動を強化している。ISO31000やCOSO-ERMを参考にしながら、独自にリスクマネジメントの体制を整備。現場の業務執行部門(第1線)、ITや人事など管理部門(第2線)、内部監査部門(第3線)でリスクマネジメントを推進する3線モデルを確立した。実際にリスクマネジメント活動で使っているテンプレートとともに、同社の活動を紹介する。
2024/07/23
-
インシデントの第一報を迅速共有システム化で迷い払拭
変圧器やリアクタなどの電子部品や電子化学材料を製造・販売するタムラ製作所は、インシデントの報告システム「アラームエスカレーション」を整備し、素早い情報の伝達、収集、共有に努めている。2006年、当時社長だった田村直樹氏がリードして動き出した取り組み。CSRの一環でスタートした。
2024/07/23
-
「お困りごと」の傾聴からはじまるサプライヤーBCM支援
ブレーキシステムの開発、製造を手掛けるアドヴィックスは、サプライヤーを訪ね、丁寧に話しを聞くことからはじまる「BCM寄り添い活動」を2022年度から展開している。支援するのは小規模で経営体力が限られるサプライヤー。「本当に意味のある取り組みは何か」を考えながら進めている。
2024/07/22
-
-
危機管理担当者が知っておくべきハラスメントの動向業務上の指導とパワハラの違いを知る
5月17日に厚生労働省から発表された「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、従業員がパワハラやセクハラを受けていると認識した後の勤務先の対応として、パワハラでは約53%、セクハラでは約43%が「特に何もしなかった」と回答。相談された企業の対応に疑問を投げかける結果となった。企業の危機管理担当者も知っておくべきハラスメントのポイントについて、旬報法律事務所の新村響子弁護士に聞いた。
2024/07/18
-
基本解説 Q&A 線状降水帯とは何か?集中豪雨の3分の2を占める日本特有の現象
6月21日、気象庁が今年初の線状降水帯の発生を発表した。短時間で大量の激しい雨を降らせる線状降水帯は、土砂災害発生を経て、被害を甚大化させる。気象庁では今シーズンから、半日前の発生予測のエリアを細分化し、対応を促す。線状降水帯研究の第一人者である気象庁気象研究所の加藤輝之氏に、研究の最前線を聞いた。
2024/07/17
-
-
災害リスクへの対策が後回しになっている円滑なコミュニケーション対策を
目を向けるべきOTリスクは情報セキュリティーのほかにもさまざま。故障や不具合といった往年のリスクへの対策も万全ではない。特に、災害時の素早い復旧に向けた備えなどは後回しになっているという。ガートナージャパン・リサーチ&アドバイザリ部門の山本琢磨氏に、OTの課題を聞いた。
2024/07/16
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方