市と慶応義塾大学SFC研究所、TIS株式会社の産学官連携

宮城県登米市と慶應義塾大学SFC 研究所、TIS 株式会社の産学官共同による「災害時の自治体及び住民間の情報共有システムの実証実験(以下、実証実験)」が11月7日(金)、登米市内で実施された。

実証実験は、11月6日~ 9日にかけて東北6 県を舞台に実施された陸上自衛隊東北方面隊大規模訓練「みちのくアラート2014」と連携。TIS 株式会社のクラウド型危機管理情報共有システム「Bousaiz(ボウサイズ)」を活用し、被災後の対策本部の情報収集や住民への周知、避難所運営における避難者のリスト管理といった初動対応について、タブレットやスマートフォン端末からスムーズにシステムを操作し対応できるかなどを検証した。

登米市は宮城県と岩手県境にある人口約8 万4000 人の町で、東日本大震災では、地震発生と同時に市内全域が停電し断水。通信網の断絶などで被災状況の把握が困難となり、行政庁舎間の連絡すらとれない状況になった。そのような中、沿岸部から多数の避難者を受け入れた。

「対策本部と8カ所の統合支所、対策本部と避難所、避難所同士の連携ができず、職員同士の情報のやりとりもできなかった。避難者のリスト作りも手書きで、その紙を人が持ち歩く状態。誰がどこにいるのかといった避難者の管理もできない。支援物資もどこに何があるか、どこで何が必要かといった情報が入手できなかった」(登米市情報システム担当企画政策課櫻節郎氏)。

同市の布施孝尚市長は、今回の実証実験を行うに至った理由を「3.11の経験から、避難者と物資の管理が非常に重要であること、情報通信網の整備、データの整理、情報の共有に力を入れなければならないことを痛感した。慶応大学SFC 研究所の提案を受け、実証実験を行うことにした。市民の安心、安全の一助になると大きく期待をしているし、全国の自治体の参考事例になればと思っている」と話した。

実証実験は、午前9 時に震度6 弱の地震が発生したとの想定で行われた。

本庁に対策本部が設置され、2カ所の避難所(登米総合支所、東和総合支所)でどのような対応をとっていくかというシナリオによって進められた。主な実証業務は、①災害対策本部における情報収集、指示、伝達、②住民への情報周知、③避難者リスト管理、④救援物資管理、⑤避難者と物資のマッチング。

本庁の対策本部では、外部にいる職員が対策本部からの問い合わせに対し、タブレット端末から状況や写真(橋や道路が不通となったと想定)を入力。その情報は、本部、避難所間でリアルタイムに共有されることが確認できた。

登米総合支所では、2 階の会議室が避難所運営の実験場となり、運営にあたる職員と、避難者役の職員が集合。避難者は、専用の避難者アプリを使って、自分がどこに避難していて、必要な物資は何かなどを申請した。登録された情報はリアルタイムに集計され、自動で避難者名簿が作成された。
 
アプリには、あらかじめ避難者の基本情報(氏名、住所、生年月日、性別)と病気、常薬などが登録されており、また、避難所名と必要な物資も入力されている。

実証実験により、避難所ごとの避難者数の把握や住民からの安否の問い合わせ対応、要求物資の把握が、適切に対応できるという実証を得た。

当日は、東日本大震災で住民からの情報収集・伝達の役割を担い活躍した地元のコミュニティFM 局「はっとエフエム」も参加。FM 放送による住民への災害情報の発信を試験的に行った。

櫻氏は「避難所で一番パワーを使わなければならないのは、避難者のサポートと支援物資の整理。皆さんが生活するために必要なものがきちんと揃えられるか。そのための情報共有のシステム作りが必要」と語った。