2019/03/07
昆正和のBCP研究室
■災害に興味がない人が増えている!?
ところで2018年の夏の終わり、通信プロバイダー大手のBIGLOBEがユーザーを対象に「災害に関する意識調査」というアンケートを実施したが、筆者はこのアンケート結果に次のような少し気がかりな所見があることに気づいた。
回答者の過半数が「過去に起きた災害を忘れてしまう」と答えているのである。なるほど、近年はあちこちで大規模災害が多発しているから、これらをいちいち覚えていたり気にかけていたら神経が参ってしまうよということなのかもしれない。この「忘れてしまう」という回答に、早く忘れてしまいたいという意思のようなものを感じるのは筆者だけだろうか。
おまけに20代男性の4人に1人が「過去の災害には興味がない」と回答している。少し厳しい見方をすれば、こうした姿勢は「過去の災害を見て見ぬふりをする、災害の教訓を今後に生かそうとは思わない」と答えているのと変わりはない。
8年前の東日本大震災の後、「この未曾有の大災害を"過去のこと"にしてはいけない。また明日にも起こるかもしれない次の災害への備えを万全にしよう」といった声があちこちからあがったものだ。当時に比べ、今日の冷めた姿勢には大きな隔たりがあることは否めない。
思うにこうしたネガティブな意見は、必ずしもアンケート回答者個人に帰して済むことでもなさそうだ。私たち一人ひとりの心のどこかに、やはり災害を「過去の出来事」や「対岸の火事」として早く忘れたい、見て見ぬふりをしたいという気持ちがあるのではないか。もしそうだとすれば、災害に対して後ろ向きの空気を作り出してしまう何かが、この社会の中にあるのかもしれない。
- keyword
- BCP
昆正和のBCP研究室の他の記事
おすすめ記事
-
-
過疎高齢化地域の古い家屋の倒壊をどう防ぐか
能登半島地震の死者のほとんどは、倒壊した建物の下敷きになって命を落とした。珠洲市や輪島市の耐震化率は50%程度と、全国平均の87%に比べ極端に低い。過疎高齢化地域の耐震改修がいかに困難かを物語る。倒壊からどう命を守るのか。伝統的建築物の構造計算適合性判定に長年携わってきた実務者に、古い家の耐震化をめぐる課題を聞いた。
2024/03/28
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年3月26日配信アーカイブ】
【3月26日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:四半期ニュース振り返り
2024/03/26
-
-
-
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年3月19日配信アーカイブ】
【3月19日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:副業・兼業のリスク
2024/03/19
-
リスク担当者も押さえておきたいサイバーセキュリティ対策の最新動向
本勉強会では、クラウド対応のサイバーセキュリティ対策の動向を、簡単にわかりやすく具体的なソリューションの内容を交えながら解説します。2024年3月8日開催。
2024/03/18
-
発災20分で対策本部をスタートする初動体制
総合スーパーやショッピングモールなど全国各地のイオン系列の施設を中心に設備管理、警備、清掃をはじめとしたファシリティマネジメント事業を展開するイオンディライト(東京都千代田区、濵田和成社長)。元日に発生した能登半島地震では、発災から20分後にオンラインの本社災害対策本部を立ち上げ、翌2日は現地に応援部隊を派遣し、被害状況の把握と復旧活動の支援を開始しました。
2024/03/18
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方