■西日本豪雨で企業が経験したこと

本連載は、災害の教訓事例そのもの、つまり個々の企業が何を経験しどのような手段で災害を生き延びたかを詳述することが目的ではない。そこでざっくりとではあるが、以下ではいくつかのアンケート結果から見えてくる「教訓につながる事実」のみを述べることにする。

まずは水害である。記憶に新しいところで2018年6月末~7月上旬にかけて西日本中心に発生した平成30年7月豪雨について企業への影響を見てみよう。同年7月20日に大阪商工会議所が発表した「西日本豪雨が企業経営に及ぼす影響に関する緊急調査」では、次のような傾向が見て取れる。

企業の6割あまりが豪雨災害での影響を懸念する中、製造業にもさまざまな影響が出た。「高速道路の通行止めによる商品や製品の配送遅れ」「通勤困難な社員の発生」「会社及びグループ会社の会社が断水等により操業停止」「販売店、仕入先に被害」といったことである。

自社への直接・間接の被害や影響については、「物流網の寸断による仕入、納入、配送への支障」が最多の4割超(41.9%)で、サプライチェーンへの影響が生じていることがわかる。「自社やグループ会社の会社、営業所、倉庫の被災」「自社またはグループ会社の従業員が被災」「仕入先の被災による部品、原材料、商品など調達に支障」はいずれも27.9%であった。

一方、この災害に対する企業の対応としては、「出勤可能な従業員の把握、出社要請」、「出勤不可能な従業員への自宅待機命令」が7割弱(69.2%)で最多、その次が「被災した自社またはグループ会社の被害状況の確認及び復旧」(43.1%)と続いている。