2.26事件、技監青山士、「朝日」襲撃
軍部暴走が日本を破滅に追い込んだ
高崎 哲郎
1948年、栃木県生まれ、NHK政治記者などを経て帝京大学教授(マスコミ論、時事英語)となる。この間、自然災害(水害・土石流・津波など)のノンフィクションや人物評伝等を刊行、著作数は30冊にのぼる。うち3冊が英訳された。東工大、東北大などの非常勤講師を務め、明治期以降の優れた土木技師の人生哲学を講義し、各地で講演を行う。現在は著述に専念。
2019/05/07
安心、それが最大の敵だ
高崎 哲郎
1948年、栃木県生まれ、NHK政治記者などを経て帝京大学教授(マスコミ論、時事英語)となる。この間、自然災害(水害・土石流・津波など)のノンフィクションや人物評伝等を刊行、著作数は30冊にのぼる。うち3冊が英訳された。東工大、東北大などの非常勤講師を務め、明治期以降の優れた土木技師の人生哲学を講義し、各地で講演を行う。現在は著述に専念。
昭和11年(1936)2月26日未明、降り積もった雪を踏みしめて、陸軍大尉野中四郎ら皇道派青年将校20人に率いられた叛乱軍1400人は武装して、首相官邸、内大臣(天皇を補佐する大臣)私邸、侍従長私邸、蔵相私邸、教育総監私邸などを次々に襲った。内大臣斎藤実、蔵相高橋是清、教育総監渡辺錠太郎は殺害され、侍従長鈴木貫太郎は重傷を負った。首相岡田啓介、前内大臣牧野伸顕は危うく難を逃れた。
新聞社では、軍部の政治干渉を批判していた「東京朝日新聞(東朝)」が襲われ、夕刊の発行が不可能になった(後述)。言論活動に対する武力での直接暴力である。直ちに戒厳令が布かれた。2.26事件である。内務省技監(技術官僚最高ポスト)だった青山士(あきら)はこの皇道派青年将校の暴挙をどう見たのか。
底冷えのする雪の早朝、青山氏邸前に黒塗りの公用車が停まった。玄関のドアが激しく叩かれた。公用車の運転手は蒼ざめており吐く息が白く顔をおおった。車のフロントグラスに大きく「公用」の紙が貼られていた。霞が関の内務省ビル(旧人事院ビル)が叛乱軍に取り囲まれている中での緊急招集である。青山は公用車到着前に電話連絡を受けていた。
「とんでもないことを起こしてくれた」と吐き捨てるように言って分厚いコートに身を包み公用車に乗り込んだ。彼は非戦思想を訴えるキリスト教指導者内村鑑三の信奉者であり、自身も反戦思想の持主だった。青山は事件が鎮圧され反乱部隊が全員帰順する29日夜になって帰宅した。蒼ざめ憔悴しきった表情の青山は、「これで日本も終わりだ」と小声で妻に言うと、厚いコートを脱ぎ書斎に入った。
ふきしまく 吹雪は一日 荒れゐたり 由々しきことの 起こりてゐたり
大君の 兵をひきゐて 軍人(いくさびと) けさ屯(たむろ)せり 勅にそむきて
「兵に告ぐ」と 戒厳令の 声いえど 心に徹(とおら)ざるものあり
(南原繁歌集「形相」の「二・二六事件」より。後の東大総長南原は青山の信仰の友である)。
安心、それが最大の敵だの他の記事
おすすめ記事
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月23日配信アーカイブ】
【4月23日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:南海トラフ地震臨時情報を想定した訓練手法
2024/04/23
2023年防災・BCP・リスクマネジメント事例集【永久保存版】
リスク対策.comは、PDF媒体「月刊BCPリーダーズ」2023年1月号~12月号に掲載した企業事例記事を抜粋し、テーマ別にまとめました。合計16社の取り組みを読むことができます。さまざまな業種・規模の企業事例は、防災・BCP、リスクマネジメントの実践イメージをつかむうえで有効。自社の学びや振り返り、改善にお役立てください。
2024/04/22
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方