読みにくい日本語を理解しやすく

こんな、工夫が散りばめられているUDフォント、これを使わないのは、高齢化社会の防災情報としてまずいくらいでは? と思えてきます。一瞬で情報を読み取り行動しなければならない災害時、ほんのワンタイミングでも読み遅れたり、誤読してしまったら、命に関わる場合も出てきてしまいます。でもUD文字は、まだ当たり前のものとして普及していません。

というのも、このUDフォント、世界的な流れがあったわけではなく、最近になって日本で研究が進められたものなのです。

なぜかというと、英語などは元々読みやすい言語なので、フォントの工夫という問題がそもそも起きにくかったと言われています。

それに比べて日本語の場合、「避難勧告」「避難指示」など、漢字ばかりで書かれても意味が頭に入りにくいですし、かといって漢字とカタカナ、ひらがなが混じっていても、様々な形を認識しなければいけないので、やはり読むのが遅れます。日本語というのは、もともとかなり認識するのが難しい言語なのです。さらに、一説によると、同じ文字情報でも、英字の方が日本語の半分の大きさで認識できると言われているとか。だからこそ、UDフォントの必要性があったのですね。

このUDフォントが最初に意識されたのは、2006年と言われています。高齢者が家電製品の取り扱いを読み誤ったケースがあったことから、家電メーカーが研究をし始めたのが最初だと言われています。まだ13年しか経っていないのですね!

ただ、最近のことゆえに、UDフォント規格というものが確立されているわけではなく、個々の企業や研究者の努力によって研究・開発が進められてきた分野なのです。そして研究により、高齢者だけではなく、弱視(ロービジョン)や読み書き障がい(ディスレクシア)がある方にも見えにくい文字があることがわかってきました。

こうやって比べてみると、確かに一般的な教科書体は線の太さに強弱があることに気づきます。みんなが使う教科書は、みんなが読みやすいものであってほしいですよね。フォントによって勉強が進まないなんて残念すぎます。

UD文字が学校で標準仕様として使ってもらえたらいいのにと思ったところ、学校教育にいち早く取り入れたのは奈良県の教育委員会でした。

奈良県UDフォント採用事例 モリサワ(出典:YouTube)

映像をみると弱視や読み書き障がいの子にとって読みやすい字は、すべての人にとって読みやすい字であることがわかります。

学習効果があがるとなれば、民間は素早く対応されます。「ドラえもん はじめての論語」とか、「ベネッセの小学生講座」などで採用されているのを見ると、なるほど! 論語がすいすい頭に入りそうって思いました!