2016/06/09
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』
低体温症で震えている人を見たら「寝るな~寝ると死ぬぞ!」は間違い?必ずしなければいけない○○は?
だから、震えている人をみたら、⚪︎⚪︎すべきです!
さて、ここで問題です。上記⚪︎⚪︎に入る言葉は?
ここで、とっても多いのは、「寝るな〜。寝ると死ぬぞ!」とか言ってほっぺたを叩くシーンを想像されるパターンです。児童向けの漫画などにも書いてあるのを見つけてしまいましたが、ブブー。不正解です。
そんな事が頭にあるからでしょうか?東日本大震災直後、こんなアイデアが紹介され、賞賛されていて驚きました。部屋の四隅にそれぞれ1人づつ寝て、最初に目覚めた人が次の角の人を起こします。起こされた人は次の角の人を起こしに、次の人もまた・・・そうすると、寝ずにすむから死なないんですって・・・・ありえなーい!
低体温症の結果として、体温をからだの中心部に集めて、生命維持を図ろうとするため、眠くなってきます。確かに、ここで、寝ると、自分で体を温めようと震える機能が使えなくなるので、死に至やすくなります。でも、寝るから死ぬわけではなくて、低体温症になった結果として眠くなったわけで、低体温の原因を取り除かないかぎり、ほっぺたを叩いても、隣の角の人を起こしに行こうとしても、(低体温症になった人は隣の人を起こしにいくこともできなくなりますが)低体温症の進行は進みますから、死は免れないですよね。
ここで、⚪︎⚪︎に入れるべきなのは、まず服が濡れてないか確認するということです。山でも災害時でも、少しの汗でも、そのまま服が濡れた状態を維持すると気化熱により体温が急速に奪われます。走って電車に飛び乗った時、車内のクーラーで体が冷えてしまう、あの感じです。
次に濡れた服を乾いた服に着替えさせてください。濡れたまま暖かくなることはありません。低体温症が進行するだけです。濡れたままエマージェンシーシートをかけても全く意味がありませんからご注意を。あの銀色や金色のシートは、体温を放射によってさらに温めるものですから、シート自体が発熱しているわけではありません。濡れて冷めゆく体温を放射してもひんやり感を増しているだけで無意味です。
もっとも、濡れてないか確認&着替えとはいえ、相手の同意を得ずに行わざるを得ないケースもありますから、同意を得られるであろう人の、例えば親子であるとか 同性の方の対応を優先させてくださいね。
ちなみにここでも、テレビや映画、マンガに時々出てくる「たがいに服をぬいで温めあえば助かる」というのも、体温が33度以下になるとブブーです。山岳救助ではNGとされています。低体温症の人の体温の下がり方は急激なので、救助者の体温であたためようとしたら救助者の体温も急激に下がって、死者が複数になると言われています。
軽度の段階での対処法や、中度の場合の医療機関へのつなぎ方、特に、体表面への加温やマッサージも禁止など対処方法が難しいので、確認をお願いします。
http://www.terumo-taion.jp/health/teitaion2/02.html
「中等度の低体温症の処置」
体温が33~30℃の低体温は、ちょっとした刺激で不整脈を起こす心配があるので、着替えも自分ではさせないなど、十分に注意をはらう必要があります。
* 体表面の加温は禁止
病院に連れていく前に体表加温をしない。裸での添い寝も禁止。 中等度以上の低体温の場合、体表面を加温すると冷たい血液が心臓にもどって中心の臓器などの温度が下がり、ショックを起こすことがある。
手足のマッサージ、心臓が止まっていない場合の心臓マッサージ、手荒に搬出したり、歩かせたりなども避ける。
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』の他の記事
おすすめ記事
-
企業理念やビジョンと一致させ、意欲を高める人を成長させる教育「70:20:10の法則」
新入社員研修をはじめ、企業内で実施されている教育や研修は全社員向けや担当者向けなど多岐にわたる。企業内の人材育成の支援や階層別研修などを行う三菱UFJリサーチ&コンサルティングの有馬祥子氏が指摘するのは企業理念やビジョンと一致させる重要性だ。マネジメント能力の獲得や具体的なスキル習得、新たな社会ニーズ変化への適応がメインの社内教育で、その必要性はなかなかイメージできない。なぜ、教育や研修において企業理念やビジョンが重要なのか、有馬氏に聞いた。
2025/05/02
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方