水を防いで水蒸気は外に逃がす「透湿防水素材


そんなわけで、熱が上がると解熱剤という薬が存在しますが、熱が下がったらあげる薬はありません。濡れるというのは、みなさんが想像する以上に、命にかかわるのです。だから、山では濡れないように、レインウェアが最重要装備になっているのです。

静岡の森のようちえん「野外保育ゆたか」での子どもたち。水たまりに空が映っているのを発見。レインウェアがあると、普段の雨も楽しい!

もっとも、かつての山道具は、外からの雨雪を防ぐべく防水性能をあげたのですが、体から出る汗による体温の低下を防ぐことができませんでした。防水と透湿は相反する機能なので、両立が難しかったのです。しかし、1970年代に透湿防水素材が開発されたことにより両立が可能になりました。代表的な透湿防水素材のGore-Texは、1㎠に14億個前後の小さな穴があいており、その穴が、穴より大きな水滴は防ぐけれど、穴より小さい水蒸気は、外に放出できます。これをレインウェアに使うことにより、山で人が死ぬことが少なくなりました。

 

また、透湿防水素材の性能は、透湿性と耐水圧で表示されます。透湿性が高ければ、蒸れません。耐水圧が高ければ濡れません。傘でもこの耐水圧は2000mmのところ、透湿防水素材になると、10000mmを超えています。レインウェアのみで雨は防げるものなのです。20000mmを超えるあたりになれば、大人がレインウェアを着たまま水たまりにすわっても濡れません。それゆえ、雪の上にすわっても濡れません。雨にも雪にも使えるレインウェアということになりますので、いつも雪が降る地方ではない場合の大雪対策とすることもできます。さらに風も通さないため、体感温度を下げません(風速1mで体感温度は1度下がります)。

これで、100均のものを避難袋に入れておくのと格段の違いがある事がおわかりいただけたのでは?

ちょっと雨を避ければいいわけではないのです。地震による避難、洪水による避難で、その後、電気もなく、暖もとれない場所で風雨をしのぐ可能性があるのです。その時、濡れたり、蒸れたりするレインコートを着ると、命を失うおそれがあることをしっかりイメージしていてほしいと思います。

雨の多い日本に住んでいるのですから、レインウェアだけはちゃんとしたものを普段から使う。だから災害時にも使える。そうなれば災害用に特別なものを用意しなくてもよく、普段も快適となると思うのですが、いかがでしょうか?

とはいえ、アウトドアの派手派手レインウェアは、とても通勤に着ることができないと思っている方もいらっしゃるかも。

でも、あるんです!ちゃんと!普通のビジネスコートにしか見えない透湿防水素材のものが。いろいろ出ているので、探してみてくださいね。

透湿防水素材のレインウェアは、お手入れすれば10年くらい持ちますし、リペアもしてくれます。いいものを長く使うということも服が多くなりすぎないコツです。旅行にも便利です。服が多いと、タンスや収納用具が必要になり、転倒防止も必要になってきますので。

ちなみに、お手入れの仕方を知らない方も多いです。詳しくはお店などで聞いていただくとわかりますが、洗濯機もOKです。専用洗剤で洗って、アイロンしたり、乾燥機をかけるのが一般的です。化学繊維=熱を加えるとすぐ溶ける というのは誤解ですからね。難燃性素材ではありませんが、アイロン(低温)は推奨されています。

表示を読まず、熱で溶けると思っている人も多い。低温アイロン可。撥水性能を維持するためアイロンや乾燥機での乾燥がすすめられている