2019/08/05
安心、それが最大の敵だ
生か、死か、それが問題だ
私の好む名セリフを上げてみよう(以下、福田恒存訳などから引用する)。
「ああ、このけがらわしい体、どろどろに溶け、露になってしまえばよいのに。せめて、自殺を大罪とする神の掟さえなければ。ああどうしたらいいのだ。この世の営みいっさいが厭になった」。(1幕2場)
父を殺害した叔父の妃が愛する母であることにハムレットは悩み苦しむ。そして
「たわいのない、それが女というものか!」’Frailty、thy name is woman!’(同上)と叫ぶ。女性不信(父の死後間もなく叔父と結婚してしまった母親への不信)から恋人オフィーリアに冷たく当たる。うら若い恋人は悲嘆のあまり狂気に駆られ死に追いやられる。
「なんとみごとな傑作か、人間とは。理性においていかに気高く、その能力、姿かたち、運動においていかに無限か。だが私にとっては、こんな泥の精髄にいったい何の意味があろう。人間を見ても私のこころは喜ばぬ」(2幕2場)。真冬の夜に父の亡霊に会いその暗殺を聞かされて以降、ハムレットは気がふれたような行動をとり始める。狂気を装うのである。
「生か、死か、それが問題だ。どちらが男らしい生き方か、じっと身を伏せ、不法な運命の矢弾を耐え忍ぶのと、それとも剣をとって押し寄せる苦難に立ち向かい、とどめを刺すまで引かぬのと、一体どちらが。いっそ死んでしまった方が。死は眠りにすぎぬ―それだけのことではないか」(3幕1場)
あまりにも有名な台詞’To be ,or not to be, that is the question;…’で始まる長い独白である。青白きインテリ・ハムレットを印象付ける名セリフとして広く知られている。日本でも明治期以降、多種多様な和訳や解釈が試みられた。明治15年(1882)の「新体詩抄」(翻訳詩集)に初めてこの独白が訳されて紹介された。「永らうべきか、ただし又永らうべきにあらざるか、ここが思案のしどころぞ」。その後「生きるか、死ぬか、それが問題だ」との簡潔な直訳も出た。
「もし人間が時を費やして得るものが、ただ食って眠ることでしかないとすれば、人間とは何者なのか。けだものすぎぬ。神がわれわれ人間にこれほど大きな推論の力、先を見、後を顧みる力を与えたのは、この能力、神にも似たこの理性を、いたずらに朽ち果てさせるためではなかったはずだ」(4幕4場)。
先王殺害とよく似た場面を現王クロ-ディアスの前で旅回りの劇団に演じてみせた劇中劇によって、王が大いにうろたえ激怒する姿を見たハムレットは、亡霊の言葉通り、現王が父ハムレットを殺害したことを確認する。ハムレットは絶望の淵に立つが、復讐心を新たにする。
- keyword
- 安心、それが最大の敵だ
- ハムレット
- シェークスピア
安心、それが最大の敵だの他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2026/08/05
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/08/04
-
-
-
令和8年熊本地震 猛暑の被災地で熱中症を避ける
最大震度7を記録した令和8年熊本地震。熊本県内では400超の避難所が開設され、約9千人が避難している(29日時点)。真夏の避難生活は、熱中症の危険性を確実に高める。しかもこれからは、猛暑・酷暑下での復旧活動が本格化し、多くの人々が被災地で活動する。現地で熱中症をどう防いだらいいか。熱中症と災害医療に詳しい、さいたま赤十字病院高度救命救急センターの席 望医師に対策を聞いた。
2026/07/30
-
令和8年熊本地震 広がるデマ、どう見分ける?SNSとの向き合い方
28日に発生した最大震度7を記録した熊本地震では、早くも豪華寝台列車「ななつ星」が脱線したなどのデマ情報が広く拡散された。災害のたびに、広くSNSで拡散される情報にどう向き合えばいいか。デジタル空間の情報分析を専門とする Japan Nexus Intelligence の竜口七彩氏に聞いた。
2026/07/29
-
-
事例研究で有事に備え、組織の体質改善で形骸化を防ぐ
組織レジリエンスの強化やサイバーセキュリティーの向上、サプライチェーンの強靭化など、危機管理やリスク管理担当者が関与する領域は年々拡大している。変化する社会状況にあわせ、担当者はどのように学び、備え、対応することが求められるのか。森総合研究所代表の森健さんは、自治体と企業で危機管理担当者としての経験を積み、現在はコンサルタントとして、企業や団体の危機管理の支援を手がけている。自身の経験を踏まえ、危機管理の担当者にどうアドバイスしているのか、話を聞いた。
2026/07/27
-
-





※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方