2019/08/23
危機管理の神髄
敵を知る
―孫子 『兵法』
災害直後に感じるあの不思議な感覚のことを覚えているだろうか? 混沌に突き落とされたような非現実の感覚である。災害現場を幾度となく経験した人でもそのたびに持つ感覚である。感情の地下室から何度か抜け出した後、いくつかのことを学ぶ。何をすべきか、より重要なものとして、いかに考えるか、中でもクライシスがわれわれの敵であることをどのように考えるべきかについてである。われわれが敵について知れば知るほど、それだけ物事は良い方に向かう。例えば、クライシスは把握されることを好まないのであなたからは隠れているということを学んでいる。クライシスがあなたの上に覆いかぶさっているのに気が付かないのはそのためである。
クライシスは一人ひとりに異なる顔を見せるので、一つとして同じ災害ストーリーはない。いつも災害現場にいる人と同じ数のストーリーがある。
各々のクライシスはほとんど全ての面でユニークな変わり者である。あなたは見たこともないものを見て、そんなことを聞くとは思ってもみなかったことを聞くだろう。これらには即席でやること、新しいアイデア、解決への奇抜なアプローチが求められる。
クライシスは嘘をつくので、特に最初の段階にあなたが聞くことはほとんどが誤りであろう。
自分ではクライシスに対して準備はできていると思う。しかしそれがやって来ると、あなたの心はまっさらに洗い流されて全てのことを忘れてしまう。
クライシスは犠牲者を人質にとる。彼らとは話をさせてくれないので、正常な世界の人がクライシスの影響下にある人―高齢者・子供・家族―とワームホールを通して語りかけるときの最も一般的な結果は怒りである。
その良い例が、突然やってきた2010年のクリスマス・ブリザード(暴風雪)である。長い休日となる週末の金曜日、国立気象局は、ニューヨーク市は5インチの積雪になると予報した。深夜にはその予報は8インチに変更された。翌日クリスマスの日の午後までには、国立気象局は暴風雪警報を出して、ニューヨークの積雪は14インチになると予報した。
おすすめ記事
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方