2019/09/30
安心、それが最大の敵だ
<帰国後>
在日19年間の大きな業績は、地震観測関係の機器、計器類の創案と改良の他、鉄道方面では線路や機関車の改良による燃料の節約、また建築の面では地震国日本のために「堀込基礎橋台の構造」という耐震建築の創案などの見逃し得ないものがある。ミルンは数々の偉業を残し、1895年(明治28年)任期満ちて帰国の時には、夫人(トネ子、函館願乗寺堀川乗経の長女)を伴い、ロンドンに近いワイト島シャイド丘に住んだ。彼はここでも住宅と共に地震観測所を建てて終生の事業として地震の研究に専念した。1898(明治31年) 著書「地震学」を出版する。
ミルンは1913年(大正2年)7月31日シャイドの自宅で死んだ。享年64歳。セント・ポール寺院に葬られた。シャイド地震観測所は遺言によってイギリス科学協会に移され、オックスフォード大学に永久保存されて、彼の偉業は今日も受け継がれている。ミルン夫人は、彼の死後もシャイドの自宅に住んでいたが、子どもがいないのと病弱のため、1919年(大正8年)帰国して別府で療養後、郷里の函館・湯の川温泉などで静かな余生を楽しんでいたが、1925年1月30日、函館の自宅で病死した。享年67歳。
参考文献:「お雇い外国人 建築・土木」(村松貞次郎)、梅渓昇氏論文、国立科学博物館資料、筑波大学附属図書館資料。
(つづく)
- keyword
- 安心、それが最大の敵だ
- ミルン
- ジョン・ミルン
- 地震
安心、それが最大の敵だの他の記事
- 最終回:偉才・嘉納治五郎の知られざる一面
- 1000年前・鎌倉時代の関東大水害
- 飢饉・飢餓の歴史を振り返る
- 北海道開拓の父、米国人ケプロン
- お雇い外国人ミルン、日本の地震・耐震構造学の父
おすすめ記事
-
企業理念やビジョンと一致させ、意欲を高める人を成長させる教育「70:20:10の法則」
新入社員研修をはじめ、企業内で実施されている教育や研修は全社員向けや担当者向けなど多岐にわたる。企業内の人材育成の支援や階層別研修などを行う三菱UFJリサーチ&コンサルティングの有馬祥子氏が指摘するのは企業理念やビジョンと一致させる重要性だ。マネジメント能力の獲得や具体的なスキル習得、新たな社会ニーズ変化への適応がメインの社内教育で、その必要性はなかなかイメージできない。なぜ、教育や研修において企業理念やビジョンが重要なのか、有馬氏に聞いた。
2025/05/02
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方