2019/10/11
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』
持ち歩くと位置情報通知
上はANPYからの通知メールです。停電が起こるとまずスマートフォン上にも通知がきます。通知には位置情報のリンクがあり、そこまでの道のりをナビで確認することができます。また、管理者はクラウドのシステムにログインすると
このように、地図上で停電状況が分かります。地域全体の停電なのか、その家だけに発生した停電なのか一目瞭然ですね。そして、停電から何時間経過しているかも表示されます。
さらにすごいのは、停電を感知できるだけでなく、このコンセントを抜いてANPYを持って避難すれば避難先が追跡できるので、支援を続けられるのです。電源がなくても最長3日間追跡できます。

もちろん基地局など通信手段が損害が受けると通信は切断されてしまいますが、それまでの状況が1時間ごとに把握できる意義は大きいです。
誤差の範囲も数値化されて届くので、その辺りで人が避難しそうな場所を捜索すればよいことになります。万が一、避難している途中で負傷しても、自分の避難行動を把握してくれている人がいることは安心材料です。
そして、これがあれば、ひとりひとりに合致したその人に本当に必要な物資を避難先に届けることも可能になります。

余談ですけど、以前、難民支援に関わった事のある方から、「最近の難民支援現場では、スマホを持っている難民の上空をドローンが飛んで、スマホから必要な情報を得て、個別に支援物資を送るから、日本みたいに物資が余ったとか、必要な人に渡らなかったってことがないんだけど」と指摘され、ひそかに私はショックを受けていました。でも、この技術があれば汚名を返上できるかもと思って期待しています。
ANPYのシステムがあればどこが停電しているかも、個別の家ごとに分かり、たとえ山奥の住宅であったとしても支援からもれることがありません。しかも、どこに避難されたかわかるので、その人にあった個別の支援物資を確実に届けることができるのです。隠れ停電だからどこが停電しているのか把握できなかったとか、電源車はあるのに、必要な場所がどこかわからず手配されなかったというような、<状況把握とロジスティックについての混乱>は過去のものとすることができるのです。もうすでにシステムはあるのです。
ANPYは在宅医療患者さんの命を本気で救うために開発されました。災害時、支援の優先度が高い災害弱者のための仕組みを作ったことが、結果として隠れ停電対策になるなど、すべての人を助けることになるのですね! 台風19号には間に合いませんが、今後は、この仕組みがもっと広がればと思います。
(了)
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』の他の記事
おすすめ記事
-
柔軟性と合理性で守る職場ハイブリッド勤務時代の“リアル”な改善
比較サイトの先駆けである「価格.com」やユーザー評価を重視した飲食店検索サイトの「食べログ」を運営し、現在は20を超えるサービスを提供するカカクコム(東京都渋谷区、村上敦浩代表取締役社長)。同社は新型コロナウイルス流行による出社率の低下をきっかけに、発災時に機能する防災体制に向けて改善に取り組んだ。誰が出社しているかわからない状況に対応するため、柔軟な組織づくりやマルチタスク化によるリスク分散など効果を重視した防災対策を進めている。
2025/06/20
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/17
-
サイバーセキュリティを経営層に響かせよ
デジタル依存が拡大しサイバーリスクが増大する昨今、セキュリティ対策は情報資産や顧客・従業員を守るだけでなく、DXを加速させていくうえでも必須の取り組みです。これからの時代に求められるセキュリティマネジメントのあり方とは、それを組織にどう実装させるのか。東海大学情報通信学部教授で学部長の三角育生氏に聞きました。
2025/06/17
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方