□対策のポイント:

A社が安定した経営をするには、災害や天候の不順などどのような状況が発生しても、食材の仕入れ価格を一定にする必要があります。もっとも簡単な例は、ある食材について、卸売市場と年間の仕入れ個数を約束し、その代わりに単価を固定する契約を結ぶことでしょう。

例えば、キャベツを年間100円の単価で、10万個の仕入れを約束しておけば、仮にキャベツの価格がいくらになろうと、キャベツに係るA社の仕入れコストは年間1000万円で固定されます(キャベツの価格が50円になってしまえば、1個当たり50円の損失になってしまいますが、200円になった場合には100円得をします)。または、将来材料を購入する時期に合せて、購入を予定している量と同じだけの量の買い契約(「買い玉」「買いポジション」ともいいます)を先物市場で持っておくことで購入価格を固定化することも可能です。将来のある時期(例えば来年3月とします)のキャベツの先物価格が現在100円として、その買い玉を今購入しておきます。先物市場の値段と現物の値段は概ね連動するので、3月になってキャベツの値段が200円になっていた場合、現物を200円で仕入れなければなりませんが(今より100円の損)、持っていた買い玉を200円で転売することができるため(100円の得)、トータルでは100円で仕入れられることになります。仮に50円になっていた場合でも、現物は50円で仕入れられるのに対し(今より50円の得)、買い玉を50円で転売しなければならないため(今より50円の損)、トータル100円で仕入れられることになります(実際の先物取引では手数料が加わるため仕入れ価格はどちらの場合でも100円より少し高くなります)。

取引の際の価格の設定にあたっては、可能な限り損失を抑えようと慎重になる気持ちも分からなくはありませんが、企業におけるリスクとは、現在と将来の不確実な価格差で損をする可能性があることではなく、価格の変動が起きることにより、全体的な収益計画ができなくなることにあるのです。

今回のテーマ:「財務リスク」、「管理職・一般社員」

 

(了)