リスク対策.comは、2019年9月から10月にかけ、相次いで日本に上陸もしくは接近した台風15号、19号、21号による各組織の事業継続への影響を明らかにするため、読者を対象に緊急アンケート調査を実施した。その結果、一連の台風に対しては「多少課題はあったが、まずまず対応できた」と評価している回答が最も多かった一方で、「課題がなく対応できた」との回答は10%にとどまった。また、組織として影響を受けたことについては「従業員の通勤への被害」が最多で、従業員対策として課題と感じている点としては「出社・帰宅判断基準の整備」「一人一人の防災意識」「防災教育」の割合が高かった。

 
 

アンケートでは、BCPを策定・運用している組織に、BCPがどの程度機能したかも質問。その結果、「BCPが十分機能した」と評価している組織はわずか5.3%、「ほぼ機能した」(13.9%)を入れても2割に満たず、多くの企業がBCPの実行性についても課題を感じている状況が浮き彫りになった。課題としては「社員の意識が低かった」「BCPで風水害は想定していなかった」「被害状況の確認が遅れた」といった項目が高く、これらは2018年6月に発生した大阪北部地震でのアンケートとほぼ同様の結果になった(※「BCPで風水害は想定していなかった」は、大阪北部地震のアンケートの「BCPで今回の地震のような事態は想定していなかった」を書き換えた)。ただし、BCPの見直しがしっかり行われている組織ほど、BCPが機能していると受けとめている傾向も明らかになった。

 
 

役立ったものは「安否確認システム」が最多

このほか、一連の台風対応について役立ったものについては「安否確認システム」が突出して高く、平時からの取り組みで立ったことについても「安否確認訓練」を選択する回答が多く、着実に浸透していることを裏付けた。一方で、安否確認の発信、集計のタイミングや、対象範囲については自由回答でさまざまな意見が寄せられ、運用方法で課題が多いことも分かった。「特別警報が鳴るたびに自動的に安否確認システムが発報され混乱をきたした」との課題も挙げられた。

アンケートの対象は、リスク対策.comのメールマガジン購読者で、一連の台風により自社、従業員、顧客、取引先などに何らかの影響を受けた組織の防災・BCPに携わる人とし、396の回答を得た。このうち、個人事業者や、同一組織からの重複回答、組織名が未記入の回答などを除外するとともに、「台風15号、19号、21号による被害(間接被害も含む)が全くなかった」とする回答を除き、339を有効回答として分析した。なお、本アンケートは、兵庫県立大学の木村玲欧教授に監修を依頼した。

回答者の所属組織(以下、回答組織)の規模は1000人以上が半数近くを占め、業種別では製造業が32%と最も多かった。回答組織のBCPの策定状況は「BCPを策定しておらず、策定する予定もない」とした組織が4%で、大半がすでにBCPを策定しており、中でも「定期的に改善をしている」との回答が最多で上場企業の45.4%を占めた。

本アンケートの結果は、今後、シリーズで解説をしていく予定。また、12月5日のリスク総括セミナーでも概略について説明する(セミナーは有料となります)。
https://www.risktaisaku.com/articles/-/21242